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スーパーの女のTSのレビュー・感想・評価

スーパーの女(1996年製作の映画)
4.5
【消費者の声】94点
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監督:伊丹十三
製作国:日本
ジャンル:ドラマ・コメディ
収録時間:127分
興行収入:約15億円
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傑作。伊丹十三の作品はまだ二作目ですが、自分に合う監督なのではと感じました。『お葬式』といい、この監督は徹底したリアリティを作品に吹き込んでいるのかもしれませんね。題名通り、スーパーに精通した女が活躍する作品です。本当に面白い。魅入る面白さ。あっという間の二時間であり満足度もかなりのものでした。こういう映画を発掘して見ていきたいものだと強く思いましたね。

小林五郎は正直屋というスーパーの専務なのだが、突如現れた安売り大魔王というスーパーに客を取られて劣勢に陥る。偵察のため小林は安売り大魔王の店内にいたのだが、そこで偶然にも小学校の幼馴染みである井上花子に会うのだが。。

試写会で今作を見たスーパーの店員が上司にこんなスーパーにしたいと懇願したほど。コメディ映画なのに徹底したリアリティがこの映画にはあり、教育ビデオとして使用されている模様。例えばわざと赤の蛍光灯の光で肉の色をごまかしたり、輸入牛を和牛として売ったりと、スーパーの戦略、いや悪知恵が皮肉のように描かれています。スーパーも一企業であるため利潤の最大化を優先しなければならない。そのためには手段を選ばない。ライバルの安売り大魔王は店名通り、ひたすら商品を安くするということで客を引きつけていきます。

しかし、そこでスーパーの女こと井上が登場します。彼女は主婦であり消費者であります。経営者としてはど素人ですが、スーパーに通うプロであります。劣勢に陥っていた正直屋の救世主として彼女は活躍していきます。この巻き返しが非常に面白い。スーパーが生き残っていくには一体何を優先すれば良いのか?果たして正直屋は安売り大魔王には勝てないのか?否、やり方によっては勝てるはずです。今作は経営者として最も大切な精神を面白く、しかし誠実に描いています。そしてその一部始終を全て見終わった時、深い感動がありました。映画通りにいつもうまくいくわけではないと思いますが、経営者が一度は見るべき傑作だと思いました。

スーパーに職人はいるのか?という問題にも触れていました。職人というのはやはりプライドが高い人が多いです。プライドの高い人は他の人を信用しきっていないということもあり、仕事をあまりふりません。結果、品物の陳列が次々に遅れていき消費者は欲しい時に欲しいものが得れない状態になっていくのです。今作においては精肉の職人、魚の職人がそのプライドを貫いていました。井上曰く、売れるスーパーには生け簀なんてないそうなのですが、、とにかく当初この正直屋にはいくつもの問題が孕んでいたのです。

劣勢にある正直屋が巻き返しで安売り大魔王を追い抜いていくというサクセスストーリーも十分面白いですし、終盤のデコトラと冷凍車のカーチェイスもかなり見応えがあります。これぞ映画。映画は見て損をした映画、暇つぶしにはなった映画、見て得をした映画の三種類に分けれると思っているのですが、今作は明らかに見て得をした映画に該当します。そして、他の「〜の女」シリーズにも興味を持ちました。キャストも中々豪華です。是非ともたくさんの人に見ていただきたいです。
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