チッコーネ

破墓/パミョのチッコーネのレビュー・感想・評価

破墓/パミョ(2022年製作の映画)
3.5
本国で特大ヒットとなった、オリエンタル・オカルトホラー。
アン・ピョンギに続きジャンルにこだわってきた監督は、もともと前半の内容で1本撮ろうとしていたらしいが、おどろおどろしい『重葬』の判明を機にさらなる呪いが回るという多層展開に。
元バスケットボール選手で身長220cmというキム・ビョンオが恐ろしい怪物を演じるほか、上空で荒れ狂う鬼火も実写と、CGに頼り切らぬ作風が全体に異様な迫力を与えていた(加えて言うと、映画館内左右のスピーカーから響いてくる音が非常にリアル)。

「反日・抗日」と言われれば確かに、朝鮮民族が抱く大日本帝国への怨嗟を基盤に置く設定。
それゆえ「韓国人にしか撮れない映画」でもある。

韓国初のブロックバスター『シュリ』が世界的に注目されたのも、「韓国VS北朝鮮のリアル描写」が、韓国の特権だったから。
監督がクリエイターとして世の事象を吟味する際、韓民の根底にある「恨」を「使える」と判断したとしても、それは極めて自然な流れだと私には思える。
本作内に現れる「鉄杭」も単なるモチーフでなく、実際に「除去活動」が韓国でブームになっていた時期があったと知れば、驚くしかないではないか(実際はスピリチュアル云々でなく、測量目的で打たれたものらしいが…)。
そんな監督は本作のプロモーションで来日、「日本の漫画は私のバイブル」と無条件の称賛を惜しまなかった。
極右の視点で断じようとすれば矛盾にしか映らない「思い」や「客観的な選択」の混在こそ現代の韓国気質であり、創造の工程で多彩な表情を帯びるのは当然だ。

ユ・ヘジン演じる葬儀屋がキリスト教徒でありながら、キム・ゴウン演じる巫女と共働する姿も韓国ならでは、強いエキゾチズムを感じさせる…、監督作は、映画でもおいそれと描かれない韓国の「陰」を垣間見せてくれるので、非常にスリリングだ。
あまり期待していなかったイ・ドヒョンは太鼓を打ち鳴らす姿が絵になる、いい男(猟奇犯役とか、似合いそう)。
そしてミンシク先生が出てくるだけで感動、客席でソワソワ…、終盤で入院中の御姿がなんともかわゆかったし、初出演となるオカルト作品でしか観られぬ呆然自失の態が、そこかしこに。