安部公房の原作は未読。
デカいダンボール被った永瀬正敏が、覗き窓から世界を眺め分厚いノートに妄想だか観察だかを書き続ける。
ある種の風刺的ブラックコメディ。
本来誰からも認識もされないダンボール箱で、完全な孤独と自由を得ているはずが、イカれた殺し屋に狙われ、白本彩奈演じる謎の女に誘惑され、箱男に成り代わろうとする浅野忠信のニセ医者と出会ったりする。
相当にシュールな世界観だが、ダンボール被ったおっさん二人が「箱男は二人いらねえ!」って喧嘩するとことか、思わず吹いた。
佐藤浩市の軍医殿の実験室みたいなシーンで、なぜか背景に「呪怨」のトシオがいた気がするのだが気のせいか?
観客を戸惑わせる世界観の混沌は、映画の進行と共に更に加速。
やがて虚実は境界を失い、見る者と見られる者、箱の中と外も溶け合ってゆく。
箱を被ることによる自己認識の意味や、見る見られることの意味、自己存在の確認としての書くことの意味など、哲学的考察の誘水として面白いが、箱男のビジュアル的インパクトが凄すぎて全部持っていかれた印象。
覗き窓の使い方は、テアトル系の某odessaCMと被ちゃうけど、なるほどコレは映画でしか出来ない。
石井岳龍、相変わらず攻めてるわ。