タイトル文字が懐かしいシネカリグラフィ。
序盤のシュールながらもコミカルな展開を観て、これが石井聰亙もとい、岳龍監督が言っていたエンタメ仕立ての安部公房なんだなと期待したんですが・・・
ピークはハチャメチャな箱男VS箱男のバトルあたりくらいまでで後半はなんだか理屈っぽくなってしまい、ラストも私としてはスッキリしませんでした。いや、理屈っぽくても面白きゃいいんですけどね。
石井岳龍の監督作を観るのは『パンク侍、切られて候』公開時以来6年ぶりですが、あの映画も途中まではとても楽しく観ていたのに終盤はやっぱりなんか理屈っぽく終わってしまったなという記憶あり。
それでも評判ボロカスだったわりに私あの映画けっこう好きだったんですけどね。
安部公房原作の映画化だとどうしても勅使河原宏監督作と比べられる運命。
でもそこをエンタメ・パワーで新境地を開くかもと思ったんですが、ちょっとモノ足りない。
音楽もちょっと武満徹っぽさが強くて過去作からの呪縛も感じてしまいます。
しかし、ただの変態映画・・・とも言い切れない(いや、変態映画キライじゃありませんけどね)。
27年前のクランクイン前日にぽしゃった企画だそうですが、永瀬正敏(当時だと31歳)と佐藤浩市(当時だと36歳)は当時と同じキャストですから、当時撮ってれば作品の印象もずいぶん違ったでしょう。
浅野忠信も含め主要な男優は50~60代なのに、女優の白本彩奈だけ親子ほど離れた歳(22歳)ですからこれまた当時の作品イメージとは違うんでしょうね。
それにしても白本彩奈ってどこかで見た顔だと思ったらTVの「ワイドナショー」に出てた“ワイドナ高校生”の一人だったと知ってビックリ。
さらにTVドラマ「最後から2番目の恋」の中井貴一のあの辛辣な娘役(当時10歳)だったと知ってまたビックリ。その時が連ドラ初レギュラーで、これまで既にそれなりのキャリアを築いていたんですね。
この歳でこの独特の存在感、3人のベテラン個性派俳優と渡り合うとは大したものです。
ただの美人じゃなく大物個性派誕生の予感。