Jun潤

箱男のJun潤のレビュー・感想・評価

箱男(2024年製作の映画)
3.3
2024.08.29

永瀬正敏×浅野忠信×佐藤浩市。
1997年に原作小説の映画化企画が頓挫し、その後ハリウッドに映像化権が渡ってしまい、権利が日本に戻ってきたことでついに製作、公開されたというちょいちょい聞く事情を抱えた作品。
骨太なキャスト陣、衝撃のポスタービジュアルからどのような作品が飛び出るのか、期待して今回鑑賞です。

「箱男を意識するものは、箱男になる」
段ボールを頭から被り、外の世界を虚構として、内側の世界で真実を妄想する“箱男”。
そんな“箱男”の存在を巡り、とある完全犯罪が目論まれていた。

うーん、好きな人は好きなのかも。
個人的には惜しかった感じ。
周りからは見られていない、意識されていないと思い込み、自らを観察者であると盲信する“箱男”。
そんな“箱男”を、特定の登場人物たちを除き、世間の人々はいないものとして扱う。
この辺は自分の周囲で何が起きても自分事にはせず無関心を決め込む社会の実態や、自分だけは安全圏にいるものだと勘違いして、周囲を自分の評価軸だけで論じようとする現代のネット社会を暗喩しているかのように見えました。

あとは“箱男”が外の世界を見るための覗き穴を劇場のスクリーンとリンクして現実世界に語りかけてくるラストの構成も、最後の最後で観ている側を物語の世界に巻き込んできているかのようで、好きなポイントでした。

ぶっちゃけ“箱男”という存在だけにフィーチャーしても『世にも奇妙な物語』の中の一つの話レベルにしかならないんだろうなという印象が強めで、そこに自分と他人の境界線や自分が認識する外の世界のような観念的な話で盛り上げていくのに終始していても、評価はそんなに変わらなかったのかなと。
それに加えてクライム・サスペンス要素までぶち込んでくるものだから、中盤で中弛みしてしまった印象です。

演技についても、安定感のある演技というよりは怪演って感じの印象が強く、目だけで誰かが分かるほどの存在感は個人的にすごく好きだったものの、それ以上のものは出て来なかったかなぁと。
Jun潤

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