KnightsofOdessa

ZのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Z(1969年製作の映画)
4.0
No.497[Z氏は生きている…その遺志が…] 80点

大変不謹慎なことを言ってしまえば、2013年の生誕80年を記念して廃盤になっているソフトが復活するだろうとオデッサ少年は考えていたのだが、そんなこともなく7年の年月が経ってしまって今に至る。最新作『Adults in the Room』が昨年のヴェネツィア映画祭で上映されるなど最近まで細々と映画を撮っているらしいが、全然関係なさそうな1968年カンヌ映画祭粉砕事件やらクルーゾーの頓挫した映画のドキュメンタリーに出てたり、昨年の釜山映画祭に来てたほぼ唯一の白人ゲストだったりと"暇な人"というイメージが私の中にある。いや、まぁ暇ってわけじゃないんだろうけど。本作品は五月革命の翌年にカンヌ映画祭に出品され、審査員賞と男優賞を受賞した。ジャン=ルイ・トランティニャンは同じく出品された『モード家の一夜』にも出演している。

グリゴリス・ランブラキス暗殺事件についての小説をガヴラスが映画化した、彼のキャリアで最も有名な作品であり、『告白』『戒厳令』と続くモンタン三部作の第一編。反政権的なZ氏、及び彼の暗殺事件を捜査する"無垢なる"予審判事を徹底的に弾圧する警察組織の腐敗っぷりに今の日本を重ねてしまい暗い気持ちになる。陰謀やら人物関係やらが入り組みすぎてて、VHS画質での鑑賞だと顔判別能力が低い私にはキツかったが、それでもZ氏の妻の記憶をサブリミナル的に挿入するなど題材で開き直ることはしないように工夫している点は散見された。

この時代のギリシャの映画はほぼ観たことなかったので、東欧諸国と同じことが起こってて驚いた。もうちょっとダイナミズムが加わればワイダの"男"シリーズに肉薄するのかもしれないが、実録ものとしても『アルジェの戦い』ほどの興奮は得られず、微妙な温度を保っていたのは不思議。

結局、鑑賞後に"バベルの図書館"にあったクライテリオン版をちょっと観てみたが、思わず"いや画質!"と叫びたくなるくらいキレイになってた。最初からこっち観とけばよかった。二回も観る気にはなれないが、ちょろちょろ観る限り色味は好み。VHSじゃ色とか贅沢言ってらんないので。

※昨年の釜山映画祭に来てた欧米圏のゲスト、『キング』のプレミアにシャラメたち、『レ・ミゼラブル』の監督主演コンビ、『Fabulous』の監督主演二人がいたのは憶えてる。ガヴラスは誰かと公開トークみたいなのしてたけどガッツリ被ってたし興味もなかったので行かなかった。
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