ソニマージュ的発想と「こことよそ」的思考の水先案内人となるカバ、その名はぺぺ!──東京国際映画祭2024ワールド・フォーカス部門。今年の東京国際映画祭には美術品が一人称視点で喋る『ダホメ』とカバが一人称視点で喋る『ぺぺ』が来ており、来年は何が喋り出すのか今から楽しみなくらいだ。そして本作も『ダホメ』と同様、人ではない主体のモノローグという奇抜な演出が全く出落ちになっていない珍傑作だった。上映後のQAセッションで判明したのだが、この監督はゴダールのソニマージュ的発想で本作をつくっているようだ(ちなみに本作では作曲も担当している)。ゴダールについてはカバの数奇な運命が「こことよそ」的思考を呼び起こす点からも言及できよう。まさかドミニカ共和国発の映画でゴダールを連想することになるとは思わなかった。カメラが上空200メートルくらいありそうな高さからジャングルを流れる川に飛び込むといったナニコレ珍ショット的なサービスも豊富で、とにかく面白い一作だった。