ゆりな

ルックバックのゆりなのレビュー・感想・評価

ルックバック(2024年製作の映画)
4.5
藤野が京本に嫉妬したみたいに、私は音楽担当のharuka nakamuraに昔から嫉妬している。

2024年上半期のベスト2です。
「哀れなるものたち」「ルックバック」「フュリオサ」。
今、haruka nakamuraのサントラを聴きながら、まさに私も藤野みたいに、1人で家の机に向かってレビュー書いてます。

元々haruka nakamuraを知ったのは、好きな写真家(岩倉しおり)経由で、知ったときからクラシックやっていた人は「あぁ……」とその才能に嫉妬したはず。
岩倉さんの自然いっぱいの写真を体現したような瑞々しさ、彼の持ち味が本作でも生きていてとてもよかった。
その反面「これで売れちゃうなぁ〜」って内緒にしときたかった気持ちもあるよね。

みんなが「1つだけお気に入りのシーンを挙げるとしたら」、これバラバラなんだろうなぁ。
私は先生が渡した卒業証書の音が、重かったのが印象的でした。

河合優実ちゃん、可愛いだけじゃなく、今後確実に日本の映画界を担う女優。
岸井ゆきのや古川琴音を見つけたときよりも、すさまじい衝撃。
これにもあれにも出てるの?しかもどれも名作に?と最近大注目の彼女がまさかの声優。

昔読んだ原作を、改めて映画後に購入して読んだら、1コマ1コマが映像の世界ではしっかり色づいて、パラパラ漫画のように踊っていた。
増えていく美術参考書、積み上げられたスケッチブック、藤野の後ろ姿。
開始5分、私は原作ではハッキリは描かれていない、山で季節の移り変わりが分かる×藤野の後ろ姿で泣いた。

人と映画館に行くのが苦手な私だけど、60分しかない尺もよかった!
平日夜からご飯食べて飲んで、映画観て、また飲んで……ができるのは、この尺のおかげなのだけど、映画館出るとき、まだ座っていた人たちみんな魂抜かれたんか?ってくらい放心で涙すすってました。
今がまだ一応先行上映、原作含めファンしか来ない熱量高い会に行けてよかったです。

私には藤野みたいにライバルにムキになる気持ちも追いかけた夢もないけれど、雨の中踊りながら帰りたくなる気持ちや、大きな喪失から希望の細い細い光を、やっと見つけて歩き出す気持ちも分かります。
本当に1秒1秒、全てが良かった。
ゆりな

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