このレビューはネタバレを含みます
自分の経験にものすごく似ているところがあって、泣いた。
自分の場合は、高校生時代に、保健委員長になって、校舎の全トイレに貼る毎月発行の"保健だより"に、友人とふざけ半分で4コマ漫画の連載をし始めた。
内容は、その月の"保健だより"のテーマに沿ったギャグ漫画。
友人は惹きつける話を描くユーモアがあるが画力はまだなくて、自分は画力はあるが話が描けないので、友人がネームやキャラを描き、表現できない部分を自分が作画するという形でやって、その漫画が多くの生徒に受けた。
文化祭の時には、保健委員会の出し物としてそれを実写映画化して、好評を得て、DVD化して欲しいという声を沢山もらった。
DVD1枚300円、販売は3日間、宣伝なしで学内のみで、利益を全額ユニセフ募金する、という条件を提示したら職員会議に通ったので、80枚だけ用意したら全部売り切れた。その貢献にとてもやりがいを感じた。
今そのDVDを観返せば、身内ネタのようなところもあり、拙いところだらけだが、これがものづくりをしていきたいと思えるキッカケになり、自分の人生に大きな影響を与える分岐点だったことは確かだ。
そんなことがあってから、高校卒業後は、自分は映画を学ぶ道に進み、友人はバンドをやっていたので音楽の道に進んで、インディーズでデビューもしていた。
お互いに別々の道に進んだが挫折もあり、違うことをしたいと思っていた時、「一緒にもう一度漫画を描きたいね」という話になって、住んでいるところは遠いけど、こまめに連絡を取り合って構想を練っていた。
その矢先に、友人は25歳でこの世を去ってしまった。
京アニ事件を彷彿とさせるような展開とは違い、その友人は心臓発作だったが、本当に突然のことだった。
これほど自分の人生との共通点があると、流石にくるものがある映画だった。
「なんで漫画を描いているの?」
という問いには、劇中の台詞で説明しないが、自分はこう解釈した。
"自分の作品を面白いと言ってくれる人がいるから"と。
その共感に尽きる。
藤野も、「出てこい」なんて描かなければ——という不幸の起きなかった世界線を一旦は想像するが、京本が扉を開けてくれなければ、自分の漫画を好きだと言ってくれてなければ、きっと描き続けることはなかっただろう。
だからルックバック、"背中を見て"だけでなく、"振り返って"、あの過去を"思い返して"、なのだと。
もしも残酷な未来が待っているかもしれないとしても、あの時の二人の思いや行動は本物で、後悔する必要などないのだと。
この映画は、一番大切な気持ちを思い出させてくれる、人生のバイブル的作品になった。
ものづくりをしていて、創作意欲を失いかけ、自分はどうなりたいのか、何がしたいのか、迷ったりしんどくなったりした時にはこの作品を観返して、忘れかけの感情を取り戻したい。