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めまいのshxtpieのレビュー・感想・評価

めまい(1958年製作の映画)
5.0
『めまい』を最後に見たのは大学生のころ。ということは、へたしたら、もう 10 年くらい前のことになってしまう。気が遠くなるようだ……。

もしかしたら、これはアルフレッド・ヒッチコックについてはそれほど言われていないことかもしれないけれど、『めまい』はロングショットがすばらしい。キム・ノヴァクがサンフランシスコ湾に飛び込むシーンや鐘楼のシーン。俳優たちがわずかに動く人影として映る、引きまくった画の、なんと美しいことか。

ラストのシスターが物陰から出てくるシーンは、あまりにもおそろしい。黒沢清の映画にも似たような演出がある。ほとんど陰の暗さと黒色に溶け込んだ人間は、まるで幽霊や怪物のようだ。あのシスターは、ひょっとして幽霊なのではないか。

しかし、よく言われるように、ヒッチコックのミソジニーは『めまい』できわまっている。特に、終盤のシークエンスにそれが表れているだろう。女(ノヴァク)をいじめ、使役することで生まれた、おそろしいほどの美の調和。ぞっとする男性的な暴力が、『めまい』の背景にはある。

Netflix で配信されているのは、 4k デジタルリストア版。これが、ほんとうに美しい。
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