粉雪

遠すぎた橋の粉雪のネタバレレビュー・内容・結末

遠すぎた橋(1977年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

戦争映画は好きじゃないけど、豪華な俳優陣と有名な作品であることに惹かれて何年ぶり?というくらい久しぶりに鑑賞。マーケットガーデン作戦は知らなかったが、こんな大規模な失敗してたのか。

戦争映画というと戦争の悲惨さだったり、敵の残酷さだったりが強調されることが多いけど、この映画は、ドイツ軍も連合国軍も敵は味方にあり、なんですね。
ドイツ軍が殊更、残虐に描かれてはいませんし、連合国軍が美化されてもいません。

共通しているのは、ドイツ軍も連合国軍もトップがボンクラで犠牲になるのは、いつも現場の名もない兵士達ということです。
むしろここでは、連合国に比べてドイツ将校はそれなりに礼儀があったり、ボンクラ上司の命令に背いて橋を爆破しようとしたり、有能に描かれています。

当然のように巻き込まれて犠牲になる善良なオランダ市民達も同様です。アンソニーホプキンス演じるイギリス将校が問答無用で市民の家を基地として占拠するのは見ていて気持ちの良いものではありません。

オランダ地下組織の一員として勇敢に情報収集していた少年も、集めた重要な情報がダークボガード演じるイギリス将校に黙殺され、結果命を落とします。

この映画、部下はドンドン死ぬけど、連合国の将校はアンソニーホプキンスが捕虜になるけど、ほとんど生還するんです。
負傷兵の避難のために、一時休戦を申し入れに行くのはローレンスオリヴィエ演じるオランダ民間人の医師です。ショーンコネリー演じるイギリス将校は、どうせ無駄だろうが、あなたがするのは勝手だ、と突き放します。ドイツ側は、反対もありましたが最終的に受け入れます。
トップは現場の兵士や市民の事なんか、本当には考えちゃいない。そんな映画に思えました。ジーンハックマン演じる将校だけが、終始冷静に物事を見ていました。

多少強引に入れられた感のある、ジェームズカーン演じる軍曹のエピソードも、戦場で1人の兵士の命がいかに軽んじられているかよく分かるものになっています。命の保証をカーンに求めた兵士はそのおかげで一命を取り留めます。
それがなければ、軍医でさえ、診察もせず、彼を見殺しにしていたでしょう。

レッドフォード演じる少佐も無謀な作戦を引き受け、死ぬ思いでやり遂げ、部下の半分を失ったのに、結局その努力も徒労に終わります。
ショーンコネリーが最後に8000人の部下を失った、と悔しそうに口にするのとは、重みが違って見えます。ダークボガードに至っては、何をか言わんや、です。

ラスト、ローレンスオリヴィエ医師と、負傷兵に家を提供した夫人が、子供達を連れて逃げていくのは印象的です。彼らが無事で済むことを祈らずにはいられません。

余談ですが、先日見たばかりのハタリ!に出ていたハーディ クリューガーをドイツ軍人役で見つけた時は嬉しかったです。
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