2024.09.03
『悪人』『怒り』吉田修一原作×江口のりこ主演。
嫁入りし、夫の実家の敷地内にある離れで暮らす初瀬桃子。
彼女の1日は母屋で暮らす義母からゴミを回収し、ゴミ捨て場に持っていくことから始まる。
夫の真守は桃子の話に無関心で、急にいなくなってしまった「ピーちゃん」は一向に見つからない。
ゴミ捨て場で相次ぐ不審火、出戻りの展望が見えないパート先の石鹸教室など、桃子の“愛”に対し、周囲は“乱暴”に振る舞う。
乱暴に扱われ続ける愛情の行く末は、狂気か、それともー。
こりゃあ江口のりこ劇場じゃあ……。
ほぼ全編江口のりこが演じる桃子の視点から描かれており、中盤あたりまでは、些細な出来事に振り回されながらも、感情は安定しているように見えていましたが、その心の奥底ではどんな感情が渦巻いていたのか。
桃子の実情が全て作中で明言されたわけではありませんでしたが、作中で起きていく出来事に対して何を考えているのか、些細な感情の動きまで出ていたと思います。
予告の感じだと嫁vs姑がメインのようでしたが、実際のところ桃子が持つ無償の愛に対する世間の無関心がメインだったのかと感じました。
真守のためにリフォームや食事など、家のことにどれだけ真摯に向き合っていても見返りは無い。
パートといえど新しい企画を提案するなどして尽くしても、突然何の前触れもなく教室は閉鎖される。
自分なりに綺麗にしてきたゴミ捨て場も、犯人のわからない不審火で無情に燃えていく。
首輪が着いたまま捨てられてしまう可哀想な飼い猫と違い、話し合いや挨拶の場を設けられたとしても、桃子は別れを切り出される。
桃子が隠し続けてきた秘密は、チェーンソーの轟音と共に暴かれる。
その正体は、無償の愛や博愛の精神などではなく、ただ一人を愛し、ただ一人に愛されたいという純粋な愛情。
その愛情が純粋であればあるほど、乱暴に扱った時の跳ね返りは、強いんだなぁ。
孝太郎、クズ夫イケるな……。