2024.07.31
(たしか)予告を見て気になった作品。
世界的な特撮映画を製作した時宮賢三、彼の死を悼んだ多くのファンが、彼が遺した多くの造形物を目にするべくお別れ会に入場していた。
賢三の孫・朱莉は複雑な表情でその場を眺める。
そんな朱莉は、クラスメイトの卓也と、謎の男・穂積に声をかけられる。
穂積は、賢三がかつて企画していたものの実現には至らなかった映画『神の筆』のプロットを朱莉に手渡す。
その時、穂積が鞄から取り出した筆のような小道具から出た光が、朱莉と卓也を謎の場所へと飛ばしてしまう。
不思議な生き物がいるこの場所はどこなのか、穂積がこぼした「世界の破滅を防いでください」という言葉の意味とは、そして、朱莉と卓也は元の世界に戻ることができるのかー。
監督の村瀬継蔵氏については全く知らない状態での鑑賞でしたが、作品開始直後から溢れ出る過去の特撮作品へのリスペクトから、その道の人であることは容易に想像できました。
鑑賞後に軽く調べて、予想していた以上にレジェンド級の方で驚きましたが。笑
『大魔神』は「怪魔神」なのに「宇宙船」はそのままなんですね。
今作はなんといっても日本が誇る独自の特撮技術全開な映像でしょうね。
最近は特撮作品といってもCGやVFXをフル活用しているような印象で、こうして操演などを駆使して怪獣の動きを表現する作品が観られる機会はもうなかなか無いかもしれないので、貴重な映画体験だったと思います。
ところどころ合成っぽい場面があって、そこは昭和特撮というより平成特撮っぽさが際立っていましたが、個人的にはこっちの方が馴染み深いので、懐かしさも感じられましたね。
しかし作品全体として、背景にぼかしというかキラキラしているような特効が入っていたので、それによって作品の独自の雰囲気が出せていたと思います。
74分という短い尺の上に、特撮モリモリでキャラクターの掘り下げに時間が使えないのではと不安が過ぎりましたが、最小限の描写のみで、年頃の少年少女同士のやりとりや将来に対する希望なども描けていたと思います。
亡くなってしまった人に対して複雑な感情を抱いていても、そんな人が遺したものに多くのファンが目を輝かせるほど作品に込められた情熱によって、作品自体にも自我のようなものが宿るのかもしれないという、スピリチュアルな部分も描かれていました。
樋口監督っぽい人が言っていたことが核心を突いていたと考えると、穂積の正体にも想像が膨らんで良いですね。
キャスティング的には、日本の特撮史を語る上で欠かすことのできない斎藤工、釈由美子、佐野史郎の出演は、ファンからしたらたまらんものですし、妙に出張ってくる樋口監督に毎回吹き出しそうになりました。
同世代子役と同じように、順当に年を重ねている鈴木梨央ももちろん良かったのですが、個人的には卓也を演じた楢原嵩琉くんですね。
演技面ではまだまだな部分がありますが、塩にも程がある顔つきでクセの強いキャラクターを演じており、今後に期待が高まりました。