ユミコ

天城越えのユミコのレビュー・感想・評価

天城越え(1983年製作の映画)
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この作品を観た殆どの方が、妖艶な娼婦 ハナ(田中裕子さん)のお姿を1番フィーチャーされていると思うし、それは私もだった。自然な振舞いであの演技をなさるのだから、同じ女から見ても吸い込まれてしまいそうで堪らない。思わずついていって触れてみたくなるけれど、触れてみようとしてもヒラヒラと何処かへ飛んでいってしまいそう…… ハナは決して摑まえることのできない蝶だった。

でも私が一番心に残ってしまったのは、あの坊ちゃん(伊藤洋一さん)のことだった。
「残った」のではなく「残ってしまった」ということ……
少年が痛々しくてならない。あの瞬間を忘れることができない。守ってあげたくなる。どうにも気がかりだし不憫でならない。こっちへおいでって手を差し伸べたくなる。
大人たちが守ってあげなかったから少年だけが傷ついてしまった。
母親は罪深い人。

少年の母親そしてハナ。この2人が少年の心を深く傷つけてしまったけれどハナはそのことにすぐ気づいてくれた。
結果ハナは傷ついた少年に対し魂の底からの抱擁以上のものを送ったということになると思うし ハナこそが真の母親だったのではないかと、また そうあってほしかったとどうしても願ってしまう……
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