のび

のびの感想・レビュー

2016/08/06
イカとクジラ(2005年製作の映画)
3.8
映画『イカとクジラ』は、母親の浮気をきっかけに空中分解してしまった家族が、きりきりと音を立ててねじれていく過程を描く。物語は最後まで家族の抱える問題がこじれたままで、根本的に解決するわけではない。

"家族もの"に多く描かれるような、「離婚を通じて夫婦は互いに自分を見直し、反省すべきは反省し、相手に謝るべきことは謝り、そうして夫婦の危機を乗り越え、以前より子どもたちも成長してハッピーエンドを迎えました」という単純なストーリーではないし、「家族は本当に大切な存在なのです」ということを確認するための映画ではない。その意味ではリアリティのある作品。

両親の離婚と家庭の崩壊に息子たちも否応なく巻き込まれ、家族はみな少しずつおかしくなっていく。『イカとクジラ』は、家族が壊れること、それが子どもたちに良くない影響を与えることはこういうことなんだと、物語を見ていて胸が痛くなってしまう一本。

両親は自分のことや相手をなじることに手いっぱいで、子どもたちにちゃんとした愛情を注げていない。反省も後悔もしない。家族の関係はこじれる一方だし、長男も次男も壊れてゆく。

けれどもそこに救いがあるとすれば、物語の最後の長男の行動だ。壊れてしまった家族の中で、長男だけはひょっとしたらこれまでとは違う地平に踏み出していくのではないかと思わせるところがある。そこにかすかな希望、あるいはかすかな希望の可能性がある。