回想シーンでご飯3杯いける

国宝の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

国宝(2025年製作の映画)
3.8
任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢亮)と、歌舞伎役者の息子である俊介(横浜流星)。生い立ちの異なる2人が歌舞伎役者として芸を磨きながら生きていく様子を描いた大河ドラマである。

これまでの李相日監督作品同様、本作も徹底して役者の演技力を前面に打ち出すディレクションになっている。現代イケメン俳優のツートップと言っても良い吉沢亮と横浜流星に女形をやらせるというのは反則とも言えるが、3時間の上映時間はほぼ2人の美しい容姿と演技で占められている。

一方で、脚本や構成の面白みに欠けてしまうのも、いつもの李相日作品と同じだ。特に見上愛と高畑充希に関わるパートはとても重要に思えるのだが、ぶつ切りで挿入される印象で、ストーリーの中で上手く機能していないのが勿体ない。

厳密に言うと、本作は役者が歌舞伎役者を演じる。つまり「演じている人を演じる」という二重構造を持っている。例えば映画作りを題材にした映画に名作が多いように、本作も演技に拘ってきた李相日による演技をテーマにした作品として、これまでの作品とは一線を画す高みを感じさせる。

冒頭の女形が生まれた歴史的背景に始まり、歌舞伎のパートでは演目のテロップが入る。恐らくは歌舞伎の中でも有名で、専門知識が無くとも理解できるシーンを中心に構成されているのは良心的で、歌舞伎の世界に俄然興味が湧いた。