このレビューはネタバレを含みます
ドルビーアトモスにて鑑賞。
東一郎の半生を描く。趣味でやっていた歌舞伎を認められ、そして組の親分である父の死によって、有名な歌舞伎役者の部屋子として暮らすように。
御曹司である半弥と兄弟のように切磋琢磨しながら歌舞伎の魅力にのめり込みながら、次第に自身も親や世間に認められる歌舞伎役者になっていく。
「全部あげるから日本一の歌舞伎役者にしてください」という悪魔はんへの願いが徐々に果たされていく様子が辛く苦しく、そして美しくて息を呑んだ。
白虎の「親のない歌舞伎役者は首がないようなもの」という言葉が現実になっていくのが、もはや呪いのようだと思った。
白塗りの上から流れる汗と涙、崩れる化粧が美しくて舞台に立った東一郎と半弥からは一瞬も目を離すことができない。
着物を重ねる音、白塗りの刷毛が擦れる音、素足が床を擦る音、演目中に布が擦れる音全部が鮮明すぎる。
一番印象的なシーンは健康センター的なところで客に「騙したな!」と殴られた後(このシーンもさ、客がクズすぎて胸糞だけどいいシーンだよね。だって女形としてはこれ以上の褒め言葉ないでしょう。)崩れまくった化粧と衣装で屋上で瓶のままウイスキーを飲むところ。ここが印象的だなんて監督の思う壷でしょうね…あのシーン美しさと迫力が凄すぎ。
最後の、娘のあやのとの出会いは映画くさすぎるというか説明的すぎる感じでう〜んと思ったけど…。
そして万菊さんが本当に素晴らしい。女性だもの。言葉遣いや所作、発声の仕方と眼差し。
歌舞伎を演じる役者を演じるってものすごいことだよなあとずっと考えていた。吉沢亮と横浜流星は実際に映画で流れたあの稽古を行なっているわけでしょう。俳優、本当すごい。世界の渡辺謙も、もう本物にしか見えないもん。俳優は「役」を演じるけど、歌舞伎役者は「文化と歴史」を背負いつつも「役」を演じなければならないんだとこの映画で知った。申し訳ないけれど、歌舞伎役者は演目を覚えて演じるだけだと思っていたよ…。
で、同時期公開で吉沢亮はババンババンバンパンパイヤの主演でもあるでしょう。いや振り幅どうなってんの。こっちの頭おかしくなるわ(褒めてる)。