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スターターピストルのRinのレビュー・感想・評価

スターターピストル(2024年製作の映画)
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号砲で走りだせなくても人生は大丈夫──東京国際映画祭2024ユース部門。盗んだスターターピストルを体育館で鳴らす同級生のモンを目撃したジュアンは彼女に惹かれ、勝手に反省文を書いて彼女の罪をかぶる。劇中、モンは「映画みたいに人は変わらない」と言うけれど、それを号砲がわりに駆け出すようなことはなくとも、誰かの一言で1秒だけでも笑顔になることはたくさんあって、そんなきっかけになれることを“Study better, live hard”の理由にしてもいいのかもしれない、とじんわり思わされた。

原題の「开始的枪」は邦題と同じくスターターピストルという意味みたいだけど、劇中でも原題とともに出てくる英題の“She Sat There Like All Ordinary Ones”も本作のテーマを少し違った目線で示していて好きだ。

モンは「言いたいことをたくさん考えるけどいざ話そうとするとたどたどしくなってしまう」と言い、ジュアンは「何も考えずに話して失敗しちゃう」と言う。そのふたつに「なんとなく相手を遠ざける」が加わっためんどくさい合併症を抱える私には、本作、風に乗って流れるスターターピストルの煙みたいに柔らかく響いてきたのでした。

モンがホテルの一室で荷解きをする長回しが素敵。北京電影学院からまた新しい才能が輩出されたみたい。良いジュヴナイル映画でした!
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