湯林檎

赤い風車の湯林檎のレビュー・感想・評価

赤い風車(1952年製作の映画)
3.2
芸術の秋・美術編🎨

私にとって美術は音楽に次に好きな芸術分野であり、とりわけフランスの芸術は昔から強く惹かれるものがある。
そんな訳で映画「ディリリとパリの時間旅行」と「ミッドナイト・イン・パリ」に登場する画家ロートレックの生涯を描いた作品を鑑賞。実際にムーラン・ルージュでのシーンは以上の映画の一部のシーンとそっくり似ているところもあり、「ディリリ〜」でも登場する黒人芸人のショコラも今作に登場している。(ロートレックは実際にショコラの絵を描いてる)

スコアの数値が少し低めだけど、これは台詞が英語なのが違和感満載だったのと純粋に映画として特に面白かったわけではないから(汗)
でも恐らくロートレックが好きな人、美術が好きな人なら観て損はないと思うし私も観たことを決して後悔はしていない。

ロートレックはとりわけ好きな画家ではないけど何度か本や画集で作品を観た事があり、彼の描く作品はどれも躍動感のあり思わず脳裏に焼き付いてしまうくらいインパクトがある。そして、この作品で描かれているように生まれながらの体質によって病弱で低身長、女性関係に恵まれずに酒に溺れて寿命を縮めてしまっていたことも何となくだけど知っていた。

この作品で描かれることがどこまで事実かどうかは分からないけど、ロートレックは家柄と絵の才能は誰よりも恵まれているのにその分外見は人よりも劣っているというのが何とも哀れだった。劇中で彼の低身長で足が悪いことをからかう人達もとてもじゃないけど見ていられない。言ってしまえば19世紀から20世紀初頭のヨーロッパに障害者福祉は存在しないから仕方ないのかもしれないが。
とは言え個人的には例え身体に障害があって恋愛に疎くてもロートレックは画家としての才能があって作品が現代でも有名なだけでも恵まれていると思う。なぜなら芸術家(音楽家も含む)は生前は評価が高くても死後に忘れられてしまう人、生前も死後も作品が売れずに名前すら忘れられる人が多数だから。貴族の家系に生まれ衣食住に困ることなく高い教育を受けてきたにも関わらずムーラン・ルージュというキャバレーの踊り子達を描いていたのは自分とは違う世界で生きる人々に何かしらの美学を感じたのだろう。
ある意味ロートレックの生涯を振り返ってみると芸術家の存在意義について考えさせられた気がした。

余談だけど「ディリリ〜」のロートレックは今作とは違って明るく生き生きとしているのが対比的で面白い。史実では辛いことが多かったからこそアニメーションの中では楽しそうにしているという気持ちで今観ると少し涙ぐんでしまう気がする。
湯林檎

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