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幕末太陽傳のLEONkeiのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.2
幕末の品川宿にある実際にあった女廊屋〝相模屋〟を舞台に、様々な人間模様を描いたグランドホテル方式で展開される物語。

撮影当時(1957年)のここ品川は赤線地帯であり〝売春防止法〟成立間近で、1つの歴史に幕を閉じる時代背景を江戸末期に置き換え物語にオーバーラップさせている。

落語の『居残り左平次』をベースに『品川心中』や『三枚起請』などを絡めたテンポ良いコメディだが、落語を知らなくても物語はスムーズに違和感なく十分楽しめる。

幕末に実在した〝相模屋〟を丸々セットを組み作り上げ、当時の言葉や独特の慣習がタイムスリップしたかのように面白い。

軽いコメディなのだがフランキー堺演じる〝左平次〟の生き様は、自分の置かれている立場が貧しく逆境に立たされてもポジティブな姿勢は現代でも通ずる1つの生き方だろう。

ラストシーンに複数の案が存在し関係者の間では賛否両論あったらしいが、当時としては奇抜で斬新なSFになっていたらしくボツ案も是非観てみたかった。

今村昌平らの脚本も素晴らしく、複数の落語をまとめ上げ落語と感じさせないコメディタッチな人間ドラマに仕上がっている。

現在の俳優では到底及びもしないであろう、深みと存在感と個性ある脇役陣も大人ココロをくすぐる。

今では計り知れないであろう大変革の明治維新前の幕末は、日本の長い歴史の中の日本人にとって天と地がひっくり返る最もココロ揺れた時代でもある。

この先にあるモノが地獄だろうと極楽だろうと、それでも生きていかねばならない事には変わりはない。

〝左平次〟を見れば、きっと前向きに進んでいけるのではないか..★,
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