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幕末太陽傳のZurichのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.0
幕末の品川の遊郭で、意図的に無銭飲食し、そのまま遊郭に居ついた妙な男の話。最初は胡散くさがられ、煙たがられていた彼が、絶妙の頭のキレを武器に、遊郭の主人をはじめ、いつの間にやら周囲から頼りにされるようになる(劇中でも、自分の頭脳を自負するセリフあり)。しかし、彼の真の目的が何なのか、がだんだんわかってくると、彼の明るさ、軽妙な言動がかえって、非常に寂しく、悲しいものだということがわかる。劇中にさりげなく、しかし明確に意図的に散りばめられた「縁起の悪いもの(茶碗のご飯に箸を突き立てる、履物の鼻緒が切れる、墓場で転ぶ、など)」も、彼の行動理由の暗喩となっている。

昔の日本の女優は、「オトナ」な人が多くて素晴らしい(最近の「カワイイ」人達に興味なし)。今作も、左幸子と南田洋子が素晴らしい。特に左幸子。独特の声とともに、強烈な存在感。

惜しむらくは、昔の邦画全般に言えるのだが、録音が悪くてセリフが聞き取りにくいところ。しばらく前にデジタルリマスター版が出たが、買いなおそうか・・・。
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