むぎたそ

幕末太陽傳のむぎたそのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
5.0
おかしいのに、かなしすぎる。なかなか咀嚼できませんね、この映画は。川島雄三シンポジウムがきっかけで来た「幕末太陽傳」。大学生の時に観て以来、二度目ですが、前よりグッと沁み入った気がしています。死が前よりも近くに感じられるからかもしれません。
いのさん。居残り佐平次さん(フランキー堺のキャラクター)、かなしすぎるでしょう。誰も信じてないから、ああいう処世術が身について、でも結局誰のことも信じられないのでしょう。たまに真顔になる刹那、切なすぎるでしょう。死期を悟って、軽快に走る……。希望としてはまだまだ生きてほしいが、空元気に見えすぎる……。(終わった後、一緒に観た友人と話していたけど、小学校の人気者ってこのタイプだなあ、確かに。道化。自分にも身に覚えがあるし、うちの兄なんかまさにこのタイプだなあ。滑稽にならないととてもじゃないけどそこにいることが耐えられないんだよな。)
今のやつでも十分に自分ごと化しまくりですが、現代の品川宿へ走っていくという幻のラストがあれば、より、現代ってものへの接続を感じた気がします。
とても面白い映画だったけど、ずーんってなってる。。
すぐれた喜劇は悲劇を有する。ユーモアとペーソス。ああ、どえりゃあ名作なんだけど、こんなに落ち込むやつなのか。胸をえぐられる。フランキーの身のこなしが軽くて、表面上の話は明るいだけにさ。人生、儚すぎ。走馬灯のような人たち。みんな愛らしい。みんなみんな生きて、みんなみんな死んでくんだ。墓のシーンでかなりずーんってなった。(元になった落語、「芝浜」や「品川心中」をチェックします!) 菅井きんが当時31歳というのにびっくり。。晩年と変わらないような。。すげ。石原裕次郎よりも小林旭よりも、二谷英明がっすっきー♪(永野の、ピカソよりゴッホよりラッセンがすっきー♪のリズムに乗せてね)
あと、左幸子と南田洋子のキャットファイト、本気だし、かわいいし、見応えありまくりでした。川島さん、ケンカシーンの空間の使い方がすっごいわー。熱すぎる風呂に我慢して浸かりながらお互いに「いいお湯ね」って(二人とも惚れてる)フランキーに言うとこ、いつの時代も女同士のマウンティングってあるんすね、と笑いました。
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