ちろる

幕末太陽傳のちろるのレビュー・感想・評価

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.3
カラフルなパッケージとは裏腹にモノクロだったけど、内容は色とりどりでとても鮮やか。
邦画の元祖グランドホテル方式なのではないだろうか。
時間がない、生きてる時間が足りない!
ヘンテコな咳をして危うい佐平次さんが巻き起こす遊郭でのドタバタ奮闘劇
落語は詳しくはないけど、こちらは「居残り佐平次」など、いくつかの古典落語を基にして作られたお江戸コメディなのだそう。
個人的にこういう遊郭や置屋のお話が好きでけっこう本や映画でみているけれど、「居残り稼業」なんて言葉は初めて聞いた。
はじめは非常に胡散臭くて詐欺師のようにしか見えない佐平次(フランキー堺)。
しかしそれが女郎衆の喧嘩の仲裁から迷惑客の追いはらいまで、実に見事な仕事ぶりでたちまち置屋の人気者に。
胡散臭く思った事を中盤からはまったく忘れてしまうほどにその捌きに見入ってしまう。
その時大スターだった石原裕次郎さんはまさかの脇役。
岡田真澄さんは若衆で彫りの深い美し顔とちょんまげのコントラストが見もの。
演出も細かなシーンまで手の込んだ気合の入れようで、現代の感覚でも上質な喜劇として十分楽しめる。
佐平次の悪い咳が不穏さを感じさせるラストではあるが決してお涙頂戴にはしない、あくまでコメディに徹した作り方がとても好感が持てる。
女郎おそめとこはるの並んで寝てるシーンが一番好きで、私も思わず佐平次と同じ顔になっていた。
川島監督は遊女を決して暗く描かない。
愛を持ってエネルギッシュに男に飲み込まれない強さの彼女たちの姿を描いているのでこちらも、楽しい雰囲気になるから好き。
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