Jaya

幕末太陽傳のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

幕末太陽傳(1957年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

居残り佐平次が遊郭相模屋で女郎のおひさとおそめの間で立ち回ったり高杉晋作の時計直したりするお話。「居残り佐平次」を軸に、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などをミックス。

これだけ混ぜ込めば、無理が出てきたり単なるオムニバスになったりしそうですが、違和感なく纏め上げる技量が素晴らしい。元の噺を知らなくても楽しめますし、知っていたらもっと楽しめそう。

佐平次ことフランキー堺の噺通りの飄々とした人物像が素晴らしい。余命幾ばくもない感を漂わせるシニカルさが絶妙。「首が飛んでも動いてみせまさぁ」「オレはまだまだ生きるんでぇ」とは、生への執着なのか死への諦観なのか。

劇伴も撮影もコミカルさと美しさが際立っていましたし佐平次を筆頭に名演も多かったですが、高杉晋作こと石原裕次郎の大根ぶりが浮いていて演出かとも思うようですが、慣れるとアリだなあ。久坂玄瑞こと小林旭が上手い。

しかし観れば観るほど幻のラストを観たくなります。現代の品川が素晴らしいフリになっていただろうなあ。

落語の名作を軸としてその喜怒哀楽のエッセンスを見事に抜き出し享楽的な中に死生観を映し出し、人生の機微を美しく凝縮した邦画史上に残る大傑作でした。
Jaya

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