『最後の乗客』
堀江貴さんという監督の初作、自主制作映画。※本編は東日本大震災の描写を含む。
以下、完全にネタバレ書くので観てない人はご注意。※観に行く人はネタバレなしの方が良いかと思う。
【STORY】
東日本大震災から10年。タクシー運転手の間で深夜に「浜町まで乗せてくれ」と言う女子大生ほどの若い女の幽霊が出るという噂がたっている。
同僚のタクシードライバー:タケちゃんと同じくドライバーの主人公はそんな話で盛り上がり、仕事に戻った矢先、噂の女子大生が現れ浜町までと言う。道中小さな娘を連れた母親が急に車の前に飛び出してきて間一髪のところで衝突を回避する。なぜかそのタイミングで車も故障。浜町まで乗せて欲しいと言った女は、東京に就職に行ったきり会えていなかった主人公の娘だった。なんやかんやで主人公の男性はタケちゃんを呼びに来た道を戻る。母親と主人公の娘が会話してる間、子供が失踪してしまい、探しに行く。探している途中、母親は東日本大震災の慰霊碑に自分の名前と娘の名前を見つけ…という話、でここから作品の見方が大きく変わる。
【感想】
・まず、最後まで泣かずにはいられない。
地震発生から津波警報を受けて、当時仕事中だった主人公男性とタクシーに乗り込んでおじいちゃんを助けに行くため家に戻ろうとした母子。
主人公の娘が父親に「なぜ逃げてくれなかったの?」と攻めるシーンは被災者遺族である娘の孤独感や悲しみ、ぶつけようのない怒りが伝わってきて胸が痛んだ。
・きっと「上京してきて、家族だけが被災して…私だけが生き残ってしまった。」という、この娘のような状況の人たくさんいると思うし、やりきれない思いを抱えても、それでも生きていかないといけないんだよな…
・結局、タクシードライバーの主人公は乗客の母子の意思に従って戻ろうが、逃げようが、結果的に亡くなることは変わらなかった。
ここがどうなんだろ、ほんの少し気になる。
そのまま逃げたら助かったわけじゃなくて、母子の言うことを無視して避難ルートに行ったけどそれでも結局亡くなってしまってるから…
だったらどうすれば良かったの😢となった。
それが津波の残酷さを示しているのかと思いつつ、助かった可能性の示唆を少ししてくれていれば尚良かったのかなと思う。
・乗客と主人公含め登場人物の全員が既に亡くなっているのか?と思ったが、娘だけは生きてたんだ…。リスカの痕があったから、娘も自殺して死んでしまったのかと思ったけど生きててよかった。
【『最後の乗客』から得た教訓】
・地震が起きて避難指示が出たら、みんな迅速に逃げようね…。私も日頃リュックに防災用品入れてて結構防災意識高い方だと思うけど、知らない土地に居たらどこが避難場所かわからずパニックになりそうだから、高い建物とか標識を意識してすごしたいなと思う。
「津波てんでんこ」という言葉があの当時有名になったけど本当にその通りで、まず自分の命が優先なんだけど、作品の母子のように守りたい家族やペットがいたら、救助のために戻らずにはいられない気持ちもわかるし、彼らがいなくなってしまったら、自分だけ生き延びれても意味あるのかな…なんて考えてしまう。私がこの映画の娘の立場だったら耐えられない。
・最後に、エンドロールの被災地で発見された家族写真(いまだに持ち主不明)が映し出されて、
そこでも結構泣いてしまった。
【さいごに】
映画として繊細で芸術性のある良い出来の作品か?と言われたら、ツイスト脚本でありながら深みはそこまでない自主制作映画という感じなので正直観る人によっては微妙に感じる人もいると思うけど、震災に対する意識が強まるのと、震災で大切な人やものを失くした人たちへの鎮魂歌というか…救いのような側面もある作品なのかなと感じました。