都部

こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIEの都部のレビュー・感想・評価

3.2
秋本治氏の代表作『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の記念すべき劇場版第一作、弁天小僧を名乗る爆弾魔による連続テロの解決の為にFBIより派遣された爆弾解体のプロフェッショナル 星野リサを迎え、両津勘吉を初めとする面々は調査に乗り出す……。

少年漫画の劇場版というとこの頃はまだ長編映画として見た時のクオリティはそれほどではなく、漫画の宣伝にも等しい取って付けたような筋書きが多々と見られることも珍しくないように思うのですが、意外や意外やギャグ漫画であるこち亀の劇場版の出来は一定以上を上回っているように感じました。

所謂いつものノリを担保しながら劇場版限定キャラクターの人情話を織り込む構成はこち亀のパブリックイメージその物ですが、最終盤のそれまでの布石の回収の数々は非常に映画的で凝っており、原作の作風を鑑みた上でギャグとシリアスの配分を適切に振っているという印象が強く好印象でした。宅地開発批判を敵役(かたきやく)に置く脚本は漫画ならではの安易な手つきではありますが、守るべき下町の温かみを疑わず是とする作品のそれとは正しく、最終的に勧善懲悪に帰結しながらも安易になかったこととはしない匙加減も通りがよいですね。

強いて言うなら、鼻に付いたのは安直なキャラクターの登場の数々で、ここまでリアリティラインが明確ならばそうしたお涙頂戴的な振り返りはやはりノイズであるというのが所感でした。
しかし少年漫画原作の劇場版としては、及第点以上の出来なのは否定の余地がないかと。
都部

都部