亘

死刑執行人もまた死すの亘のレビュー・感想・評価

死刑執行人もまた死す(1943年製作の映画)
3.7
【市民の意地】
ナチス占領下のプラハ。冷酷さから"死刑執行人"の異名をとるハイドリヒ副総督が白昼に暗殺される。秘密警察が暗殺犯逮捕に躍起になる中、1人の女性マーシャは、ある晩家に暗殺犯の男をかくまうことになる。

第二次世界大戦中に製作され反ナチ・レジスタンス映画の傑作とされるサスペンス作品。暗殺犯逮捕に躍起になるゲシュタポと、暗殺犯をかくまうことになるマーシャとその父、何も知らない他の家族、そしてマーシャの婚約者ヤンの話が絡み合い展開が読めない良作。

ナチス占領下のプラハ。この地域のトップは"死刑執行人"の異名をとる冷酷なハイドリヒ副総督だった。しかしある日ハイドリヒ暗殺の号外が町を駆け巡る。そしてプラハ市民マーシャは、暗殺犯を目の当たりにする。そしてその夜暗殺犯である自称バニャックがマーシャの家を訪問。その夜外出禁止令が出たこともあり、男はマーシャの家に宿泊することになる。

本作の設定は警察vs市民という点だけでは反ナチ映画だけど、それだけでなく以下のコメディ的要素が入ることで余計に展開が読めなくなっている。
特に浮気疑惑については、暗殺者の方から浮気を装う案を出してきたり婚約者ヤンに遭遇したりして目が離せない。
・マーシャの家族で暗殺犯をかくまっていることを知っているのは、マーシャの父のみ。
そのほかの家族は噂好きなおばさんたちと少年
→特におばさん達に暗殺犯のことがバレたら発狂されてしまいそう

・マーシャには婚約者ヤンがいる一方で、暗殺者をかくまうために知り合いを装う
→男(暗殺者)が怪しくて浮気の疑惑が出る。

本作のストーリーは、ゲシュタポの警部やマーシャ、スパイの男チャカの暗殺犯をめぐる話の中心にいる人たちの駆け引きがメインで、サスペンスと少しのコメディ要素を担っている。けれども、そのほかの一般市民を写すシーンはレジスタンス映画だと感じる。罪のない人々が逮捕されて処刑されていく。それでも市民たちは暗殺犯を守り抜くこと、祖国チェコを守ることを胸に団結し続ける。正直今の時代に見ると市民たちの「チェコ人ならば暗殺犯を守りぬこう、さもなければ売国奴」という姿は同調圧力が強いし、プロバガンダを感じてしまう。それにマーシャの婚約者ヤンだって、あれだけ振り回されても最終的には祖国への愛からすんなりマーシャを許したよう。それに口裏を合わせてくれいる一般市民や執事には、いつそんな口裏合わせしてくれたのかと感じてしまう。当時のハリウッド映画の勧善懲悪とかご都合主義感は否めないけれども、脚本設定としては優れているし楽しめる作品だった。

何よりナチスによるチェコ支配が進行形で進む中で製作された作品ということもあり、”NOT The end”で終わる終わり方がおしゃれ。

印象に残ったシーン:マーシャと暗殺者、ヤンが対面するシーン。”NOT the end”の終わり方。
亘