砂

教皇選挙の砂のレビュー・感想・評価

教皇選挙(2024年製作の映画)
4.3
政治的でめちゃくちゃ面白い。暴走した男性性、父権主義、マチズモが灰燼に帰すラストに圧倒された。

作中ではたびたび、印象的な引きの構図が映し出される。荘厳で巨大な宗教建築の中で権謀術数に呑まれる人間は、あまりにも小さく見えた。
思想の左右・人種の違い・スキャンダル、あらゆる軋轢が渦巻いても、彼らはその動かざるハコの中で闘うしかない。

そんな権威主義から脱せないシスティーナに、皮肉にも物理的に風穴を開けられるという始末。信仰への根底が揺らぐ危機の中、コンクラーベはクライマックスに向かう。

その先で主人公は、脱走した亀を中庭の池に戻し、終わりを告げる白煙が立ち昇る天を仰ぎ見る。

この場面こそ、自身をも含むアンシャンレジーム的な教会が持つ害悪な男性性を省み、もう進むしかないという決意を感じさせるものだった。

ここでも構図としては巨大な建物の中に人間が居る点では変わりはないのだが、初めて明確に、建物ではなく人間が主役になっていて、印象的だった。
人種や出自、思想や性別などの属性ではなく、人間そのものが陽光に照らされていて、トラッドな権威主義からの脱却を象徴するようだった。

その点で、トランプ政権でにわかにパージされだしたDEI的なメッセージにも感じる。

だがこの感想も確信とは至らず、仮固定的であるとも付与しておきたい。そこにはいつでも現状への疑惑と、訂正可能性が残されている。
砂