このレビューはネタバレを含みます
仕事ばかりで遊ばない。
仕事ばかりで遊ばない ジャックは
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
1980年の作品。
レディプレイヤーワンを見たら、みんな自ずと手を出したくなるこれです。
スティーブンキング原作の映画ってホラーの王道みたいに言われるけど、彼の小説で、これまであまりピンとくるものなかったんだよね。
なーんて、たしか「IT」の感想を書いた時にそんなことをいってましたが、すみません、これがありました!
スティーブン・キング原作というより、監督のスタンリー・キューブリックの味付けがよかったのだろうか。
「何が怖いって説明できないけど、とにかく気持ち悪い映画」という感想が正しいかな。
考えてみたら、ブライアン・デ・パルマと主演のシシー・スペイセクが、衝撃のビジュアルに仕立て上げた「キャリー(70年版)」もそうだし、スティーブン・キング原作に魅了されて、それを独自の解釈織り込んで映画に仕上げた監督の技の良しあしで面白さは決まるのかな、結局。
原作では、昔ホテルで惨殺された霊が、息子の特殊能力を見込んでとりつくみたいな話だったように記憶していますが、映画のほうは、息子よりも、その父親、ジャック・ニコルソン演じる小説家のインパクトがすごい。
アルコール依存症と創作活動のスランプに陥ってる姿もこわいし、
その心のすきまに入り込んだ邪悪なものとの間にある不穏な感じがとてもこわい。バーのカウンターでバーテン相手に、また息子をひざにおいて喋っているだけなのに、狂ってる感が。
常軌を逸した夫と、これまた様子がおかしい息子の間でおたおたする妻役の女優さんがまた怖い。
怯えてるというのは伝わってくるけど、とにかく夜中にみたら、そのあとかならず夢にでてきそうなほど、怖いんです。
この家族…インパクトありすぎや…。
二時間越えの映画で、早送りしたくなるような、やや冗長なところもあります。
「来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ、…きたああああ!」という、お約束の名シーンの数々までの気の持たせ方、不気味感の引っ張り方が絶妙。
双子、バスルームの女、エレベーター、REDRUM・・・そしてドアを割ってくるジャックニコルソン。
昔は、そんなのばっかり印象に残っていましたが、改めてみるとシンメトリーな構図や、色合い、迷路のような厨房。庭の巨大迷路。まるで自分も内部にいるような目線。
この建物、構造どうなってるんだろう、と思わずにはいられないダニーの三輪車とともにめぐるホテルの内部。
すべてが映像として美しく、不気味。強烈に焼き付く気色悪さ。
わたしは、上記の「仕事ばかりで」と延々タイプで打たれた紙を妻が次々めくるシーンがめちゃくちゃ怖かった。あのタイプライターのシーンを取り上げた「レディプレイヤーワン」に拍手だ。
…単純に「ホラー」とカテゴリーに入れるには、ちょっとどうかなぁ、と思ってしまう。
原作者スティーブン・キングが「シャイニング、じつは好きじゃない」って言う意味も考えちゃうね。実際、スティーブン・キング原作という肩書や、原作者の手から遠く離れている「不朽の映画」となってる気がする。
この息子・ダニーが成長したあとの話が続編として映画化される話があるようです。クリストファーロビンに続いて「おとなになった僕」を演じるのはユアン・マクレガー。
本作であまりスポットが当たらなかった「ダニーの特殊能力」の話に向かうのかなぁ。
うーん、ものすごい「本体」があるだけに、ちょっと心配ってのが正直なところ。
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う