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シャイニングのabeeのレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
4.3
【ホラーとユーモアは紙一重】

名作再鑑賞。

1回目より相当楽しめた。
「シャイニング」ってホラーだと思って観ると肩透かし食らうんですよね。正直言って決して怖くは無い。でも色んな意味で怖い。

作家のジャックは冬の間大雪で閉ざされてしまう山奥のホテルで管理人をすることになり、妻のウェンディ、息子のダニーと共に誰もいないホテルで5ヶ月間の外界から隔離された生活を始める。

日本のホラー映画に近いですよね。
ハリウッドのホラー映画って
「わっっっ‼︎‼︎‼︎どうや‼︎⁉︎びっくりしたやろ‼︎笑」系が多いんですけど、これは精神攻撃系です。じわじわくるやつです。
だから、何でもないものが全て怖く見える。

何でも無いはずのカーペットの幾何学模様。模様に沿うように真っ直ぐころがってくるボール。ほぼシンメトリーに作られた廊下。カーペットとフローリングの上を走る三輪車の音の違い。
ヤバいよ‼︎なんか怖いよ‼︎

何より怖いのがこの家族。不揃いすぎる。これぞキャスティングの妙。似せないことで、恐怖が増幅する。このギョロ目で全体的にひょろ長い母と目が完全にイッてる禿げ散らかした父からなんでこんな可愛い子が産まれるよ⁇怖いですよ。

そして、各キャストのオーバーアクション。特にジャック・ニコルソン、観る人が観ると演技過剰で醒めることも。しかしながらですよ、人知れず崩壊していくジャックを瞬きせずにただただ一点を見つめるあのヤバい目つきのシーンだけで表現するんですからね‼︎この映画はとにかくジャック・ニコルソンの静止画がヤバい。観客に恐怖を与えたいのか、笑わせたいのか最早分からない。ホラーとしても全体的にシュールですよね。

スティーブン・キングの作品はホラーのイメージが強いですが、ホラーというよりはファンタジー寄りの作品が多いんですよ。
「グリーンマイル」とか「ダークタワー」とかもそうですけど、良く分からない超常的な出来事や能力が多く登場する。
実は「シャイニング」の原作もどちらかというとファンタジー寄りの作品。それでもやっぱり怖いらしいですが。キューブリック版には登場しませんが、庭の動物の形に刈り込まれた木々が勝手に動き出したりするそう。
キューブリックはあえてタイトルである「シャイニング」については深く言及しませんでした。それよりもジャックの精神崩壊に重点を置きました。それも、ジャックの持つ「シャイニング」の能力によるものなのか、それとも創作活動のプレッシャーや隔離されることによる恐怖から来るものなのか、それすらもあえて曖昧に作ったのですね。

子どもたちは成長過程において「imagenary friend」と遊ぶことがあります。これってごく自然なことなんですけど、要するにこれが「シャイニング」の発想ですよね。人間には元々「シャイニング」という能力が備わっていて成長するにつれて薄れていくものなのだ。でも稀にそのままで成長する人間がいる。

「天才」にインスピレーションを与えるものってごくごく日常的なものであって、それを大人になっても不思議だと感じるか、分析しようと考えるか、ただそれだけの話なんだと思いました。

たった一本の映画から2人の天才について切々と考えさせられてしまった…
天晴です。
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