凛太朗

シャイニングの凛太朗のレビュー・感想・評価

シャイニング(1980年製作の映画)
4.0
The EaglesのHotel Californiaっていう名曲があるんですよ。ギターのアルペジオとラストのギターソロ及びツインリードがギタリスト的に凄く強烈で印象的な曲なんですけど、この曲の詩世界と、この映画シャイニングのホテルに囚われてしまってるイメージというのが、凄く似てるなぁと思う。
そして、Hotel Californiaの歌詞は難解な歌詞だということで有名ですけど、キューブリック版のシャイニングも単純なようで中々に色々な解釈ができそうで難解ですよね。アホな私では完全に理解して鑑賞するのは不可能かもしれないと思いつつ何回観たんだかわかんねーけれども。

兎に角ジャック・ニコルソンの怪演が怖いわ!って感じですが、奥さん役のシェリー・デュヴァルの顔芸はもっと怖いかもしれないし、何よりキューブリックのテイクを重ねまくって俳優を追い込みまくったり、シンメトリックな構図やステディカムの執拗なまでの多用など、映画という芸術のために拘りまくるその姿勢が何より一番怖いわ。
所謂ホラー的な怖さは、個人的にはあまり感じられないんですけどね。スプラッター要素があるわけでもなければ、幽霊やらが怖いわけでもない。そもそも私、ホラー映画で怖いと思ったことが殆どない。
でもこれは怖いですね。主に狂気的な意味で。いつの時代も、何を観ても、一番怖いのは人間の深層にある覗いてはならんような狂気だと、私はそう言いたいです。はい。

よく言われてるように、この映画は鏡が重要ですよーと。その通りだと思います。
最初の方から、息子のダニーが口の中にいるトニーと鏡を見ながら対話してたりしますが、鏡が出てくる度に、あっちの世界(ダニーがシャイニングを通して見る恐ろしい世界)とこっちの世界が入り混じっていて、ジャック・トランスはだだっ広いけど閉鎖的空間の中でどんどん狂気に満ちていき、最終的にはあのREDRUMの鏡文字に象徴されるように、妻ウェンディも狂気に取り憑かれ、完全に鏡の中の世界側になっちゃってますよね。
しかし、キューブリックはスティーブン・キングの原作とは異なり、こうなってしまったのはホテル自体の意思だということを強くは描いておりません。
超常現象的なものではなく、あくまで人間の怖さだったり、二面性的なものを描いているという点で、この映画は恐ろしいと思う。
凛太朗

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