大戦前のニューヨークに生まれた少女で、幼い頃に麻疹にかかって一度は死を覚悟するも奇跡的に回復して目の当たりにしたフェリー事故の教訓から水泳を始めたガートルード・イーダリー。1924年、パリ五輪で銅メダルに終わった後に遠泳家ビル・バージェスに出逢った彼女が、女性初のドーバー海峡完泳を目指す様を描いた伝記ドラマです。
「波の女王」と謳われ実在の人物の半生をノンフィクションの映像化権を得たディズニーが映画化した2024年公開の作品で、『マレフィセント2』を監督したヨアヒム・ローニングが『スター・ウォーズ』で一躍スターとして台頭したデイジー・リドリーを盛り立てると批評家からの支持を得て米国では予定になかった劇場公開もなされました。
『オールド・ルーキー』や『ミラクル』らの系譜に連なるディズニーが得意とする伝記スポーツ物語で、まだ女性のスポーツ挑戦に懐疑的な目が多かった時代に偏見を跳ね除けた軌跡を丹念に追います。伝統あるジャンルとあって予想以上の展開こそないですが、凛としたリドリーの存在感を最大限に活かして作品に風格を与えている一作です。