なべ

ガメラ 大怪獣空中決戦のなべのレビュー・感想・評価

ガメラ 大怪獣空中決戦(1995年製作の映画)
3.9
 ガメラってダサい。子どもごころに対ギャオス、対バイラスや対ギロン(ジャイガーはもう見なかった)を見てはそう思ってた(対バルゴンはちょっと不思議な魅力があるけど)。だって亀なんだもん。亀はかわいいだよ。断じてカッコいいじゃない。だいたい腹甲の模様が方眼の亀なんて、観察眼のない子どもの絵かよ。怪獣のデザインとして絶対ありえない。本物の亀を見たことあんのか!それに子どもの味方って何だよ。いちいち観客に媚を売るんじゃないよ。そんなダサい怪獣はごめんだねとガキの頃からアンチを決めて込んでいた。平成ガメラを観るまでは。
 いやあ、リブートガメラを初めて観たときはどんだけ度肝を抜かれたか。過去の設定を捨てた制作陣の潔さにどんだけ感心したか(腹甲も方眼じゃなくなったしね)。
 滅んだ古代文明人が対ギャオスのためにつくった最終亀型生物兵器というのはうま過ぎる!それなら火を噴き回転しながら飛翔してもいいし、火球を吐くのも全然アリだ。緑の血さえ、クロレラ培養された人工血液だと思えば納得できるし。

 プルトニウム輸送船の謎の座礁。漂流する巨大環礁。いい、夜の海から始まる怪獣映画にハズレなし。実にいい。転じて姫神島での島民失踪事件。残された「鳥!」という謎のメッセージ。ああ、必要最低限の台詞で紡がれるミステリーが堪らない。怪獣映画のツカミとして申し分ないじゃないか!
 ウルトラQファンならおわかりだと思うが、この導入部は「鳥を見た!」のオマージュというか再現だ。もちろん鳥はラルゲユウスではなくてギャオスなのだが、昔からの怪獣ファンはこの目配せにニヤニヤが止まらなかったはず。わかってるな、本気なんだなとすぐに理解できたはず。
 何より捜査中の大迫刑事が鳥類学者の長峰真弓に協力を依頼する流れが美しい。長峰の説明的台詞はかえすがえすも残念だが、それでも彼女が自分の研究のために無茶をするところや、官僚に楯突くところはなかなか気持ちいい。演じる中山忍が悪くないのよ。リアリティギリギリの美しさ。これ以上美人だと嘘になるって踏ん張りの効いた人選が絶妙。
 だいたい怪獣映画のヒロインの立ち位置って難しいんだよね。怪獣と自衛隊が戦うなかでヒロインがいていい理由なんてなかなか見つけられないもの。だからたいてい戦う主人公の婚約者とか妹とかになっちゃうんだけど、平成ガメラシリーズではその辺をうまいこと成立させている。観客をシラケさせずにヒロインを物語に引き寄せてる。それを魅力的に魅せるなんて素晴らしいじゃないか(いや、昭和ガメラの妙にエロい異星人もあれはあれでちびっこたちの性の目覚めを促す重要なキャスティングなのは承知の上だよ)。
 ガメラとシンクロする草薙浅黄演じる藤谷文子(セガールの娘ちゃんね)も初々しくて、応援して見てられるし。
 吊り橋のシーンで過去の「子どもの味方」感を彷彿させるところはあったけど、まあ許容範囲。ガメラマーチがかからないだけでも良しとしよう。
 福岡ドームでの捕獲作戦はせっかくの見せ場なのになんだがテンポが悪くて手に汗握ることができなかったが、東京タワーを巣にしたシーンで挽回。あの夕景シルエットは怪獣映画史に残る絶景じゃないか。
 平成ガメラなくしてシン・ゴジラなし。大人の鑑賞に耐えうる怪獣映画はここから始まったのだ。
 さあ、これでガメラ2 レギオン襲来に臨める。待ってろよレギオン!待ってろよ札幌で無闇にミニスカート履かされた水野美紀!待ってろよNTTの吹越満!
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