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河童のクゥと夏休みのditaのレビュー・感想・評価

河童のクゥと夏休み(2007年製作の映画)
4.5
オトナ帝国を観てびしゃびしゃに泣いて帰って、久々にこれも観たいなと思って引っ張り出してきたものの、公開時に劇場で観た時のメモに「子供が出来たら見せたい映画ナンバー1」と書いてから早十数年、どうしたって叶いそうもないからもちろんひとりで。夜中に。

お世話になった人にお礼を言う、生きていくために必要なものだけを獲る、親を想う、子を想う、屁で泳ぐ(はおいといて)、人が人として生きるために大切なことをクゥだけが当たり前におこなっている。河童なのに。河童ハゲとかいう悪口を言う人は今すぐその人と河童に謝ってほしい。

この映画は基本嫌な人間しか出てこない。上原家でさえ聖人には描かず、少しずつ人の汚い部分を見せてくる。いつ観ても泣いてしまうのは感動だけではなく同じ人間としての申し訳なさ、不甲斐なさ、悔しさが大きいのかもしれない。おっさん(犬)のあのシーンは単なるお涙頂戴ではなく、これまで人間がおこなってきたことへの警告なんだと思う。あのシーンを取り巻いていた「自分には関係ないから」と素通りする人にはなりたくない。

自然を壊して手に入れた土地、文明によって広がる社会、人間の権力は広がる一方で、心はどんどん狭くなっているのではないか。クゥが河童の世界で安心して暮らせる世界、いつでも遊びに来られる世の中には程遠い2019年、せめて心だけでも広くありたい。
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