ルサチマ

鰯雲のルサチマのレビュー・感想・評価

鰯雲(1958年製作の映画)
4.6
エドワード・ヤンの危険信号ネオンカラーライティングまで成瀬巳喜男からの引用だったとは。かと思えばここでもまた突然のアンパン差し入れがあり、小津を見る。
初めて結ばれる不倫関係は省略され、次に部屋へ招かれた時に漸く暗闇へ落ちたキスが描かれる(しかもそれがあたかもファーストキスであるかのように)。普通ならこの順序を逆にしてしまうところを、却ってこの手順を踏むことにより、彼らの関係が最早引き返せないエモーションに到達してることを目の当たりにさせられる。
彼等の関係は同時にタバコの火をつけてあげていた関係から自らタバコの火をつけることへの変化としても語られている。結ばれあう理由をなくした2人がこれから積極的に自ら会合することを口では語っているのに、タバコの受渡しは最早存在せず、記者だけがその儚い時間の終わりを宣告しているようにしか見えない。
モダンなカップルの交際も見事。指切りをしたその動作で相手の手を自分の胸元へと引き寄せるなんてキザすぎるぜ!!
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