ねぎおSTOPWAR

成春香のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

成春香(1961年製作の映画)
4.0
監督の申相玉(シン・サンオク)さんは韓国映画史に残る方。
*(在米時サイモン・シーンが通り名)
生まれたのは日本統治下で現在の東京芸大中退。親日家。
美術監督を経て映画監督デビューは1952年。
1960年代の<ルネサンス時代>を彩ったおひとりで、一時期当時の金正日によって夫婦で北朝鮮拉致(向こうで映画製作!)されていましたが、脱出亡命。カンヌで審査員も担当した有力な方。

おそらくはアメリカに住んでいた頃、韓国からの留学生らの面倒を見たり、助監督として育てたことでも、後の韓国映画に貢献していますね。初のベルリン映画祭銀熊賞を取った「荷馬車(馬夫マフ)」のカン・デジン監督も彼の助監督出身です。

まあとにかく重要な方です。

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さてさてこの作品は「成春香(ソン・チュニャン)」。とても有名な「春香伝(チュニャンジョン)」という中国に祖を持つ古典です。相当な本数が演劇や映画やリメイクされています。日本でもマンガになったりしてますよ。

基本的な構図としては、春香という美女が彼氏への貞節を守り、彼女を奪おうとする悪い奴の拷問にも耐え、その彼氏が出世して悪いやつを断罪し、ふたりは幸せに過ごしました・・・という話。(略し過ぎ??)
ちなみに春香は妓生(キーセン)という設定。父は貴族で母は同じく。そもそも妓生は中国の妓女が伝わって李氏朝鮮時代は政府管理となった、芸事をする女性を指します。身分は奴婢(ぬひ)だから下級庶民。楽器の演奏、踊り、それから性的奉仕など。李氏朝鮮時代では妓生もランクが設けられたようです。(翻訳だと「娼婦」とか「遊女」などの言葉も出てきますが、現代とはニュアンスが違いますね、キーセンです)
お話の舞台は全羅道 南原。光州(クワンジュ)の50km東あたり。半島のかなり南方です。

この作品は以下のアドレス→youtubeにあります。
PCの設定→自動翻訳機能であらかたの日本語翻訳がありますのでよろしければ。
https://youtu.be/DmYVrjINoa8

ちょうどカラーになった頃の作品で、当時の建築物や衣装の華やかな色がとても目に鮮やかです!
実は同時期に、シン・サンオク監督のライバル監督もまた同じ題目「春香伝」を公開していてマスコミは《春香対決》に大いに盛り上がったそうです。共に自分の妻を主演させていてそれも話題。・・結果はこちらシン・サンオク作品の圧勝に終わったそうです。超記録的な興行成績だったようですね。74日間連続上映!36万人動員ですって!
38分あたりに恋仲の二人が一度引き裂かれる場面があります。記録によると二つの映画ではどちらもワンショットで観せているわけですが、シン・サンオク監督は見事なまでにゆっくりとしたズームと、気持ちを抑える演技、そして急激に伽耶琴(カヤグム)の弦を切る演出で春香の心根の強さと愛の深さを表現!
現代ではなんてことないオーソドックスな撮影に見えるでしょうが、この監督凄いですよ。基本的に対象物に遠近と角度をつけて広がりのある画にしています。プラス役者の動きをも計算したパン。さっすがルネサンス時代!!(ネーミングがダサダサですけど・・笑)
75分あたりの春香の夢のシーンの赤いフィルターとダッチアングル!前後の夜を表す青い照明はイタリアなどのヨーロッパ的な技。良いですね!
いよいよクライマックスに向かうあたりでは、序盤からの計画が実ります。それまではあまり使わなかったアップ目の画角で感極まる春香とモンニョンに迫ります!!1961年の観客、これはグッと来て泣いた人が多かったでしょうね!!



41分で一度モンニョンがソウルに行く別れ。
ここで第二部、ピョンの登場。悪そうな顔!笑
ホント下品なんだ、こいつ!笑


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