【現実と虚構を繋ぎ止める存在】
カイエ・デュ・シネマベストに選出された謎の映画『Le Paradis』をようやく入手した。アラン・カヴァリエ監督は日本では『テレーズ』あたりで紹介が止まっているのだが、近年も精力的にドキュメンタリーや実験映画を撮っていたりする。とはいえ、以前挑戦した『Pater』が非常に難解だったこともあり、『Le Paradis』には警戒していた。意を決して観ると、これが美しい傑作であった。
小鳥が死ぬ。手の中で安らかに亡くなり、木陰に安置される小鳥。裸の男は、小鳥の生きた証を残そうと、木に石を置き、釘でぐるぐるに固定する。これにより、冬が到来し、雪が積もったとしても次の春まで証は残り続ける。この死の記録の工程と並行して、おもちゃのロボットや鳥を並べて詩や引用、物語が語られていく。これらは実在するものを使っているが、提示されるのは虚構である。この奇妙な関係から、墓とは何かが導き出される。死という、目から消えたものに対して実在するものを使ってその場に留め続ける運動。それが墓なのだと分かるのだ。一見すると、憂鬱を抱えた者によるVlogに見える作品でありながらも、アラン・カヴァリエが身近なものを使って提示する形而上。シンプルながらも、強烈なショットの連続に思わず惹き込まれてしまうような空間造形が慧眼であり、非常に面白かった。アラン・カヴァリエ監督のドキュメンタリー群は今追ってみると、新しい発見がありそうだ。