規範と選択がもたらした生き地獄。
本作は、飛び込みでタップダンスのレッスンを求めてきた天才少女を、聖職者の家政婦が受け入れるか否かを描いた作品でしたが、描きたいことが短い尺の中にまとめられていて良かったです。
天才少女の描き方、撮り方が素晴らしく、凡才たち用のレッスンをしてもパッとせず、自分の土俵で戦うことで、何十倍も力を発揮する、その展開と映像の説得力は尋常ではありませんでした。
踊る天才少女を中心に、カメラがその周りをグルグル回るカメラワークは、少女の天才っぷりを表現するだけに留まらず、視覚的にもフレッシュな印象を受けました。
中盤以降、家政婦も興が乗って上品な『セッション』のようになっていったのも面白かったです。
そして、特筆すべきは最後の展開、教会の規範によってとある選択をすることを迫られる家政婦の苦悩と、選択をしてしまったことで決定付けられた絶望に、静かな嘆息を漏らしました。
目立った悪い点もなく、脚本、演出、撮影、美術、役者の演技と、細部を見るごとに加点されていきました。
総じて、聖職者、ひいては大人であるが故に選ばざるを得なかった選択に、天才少女の天才っぷりをとことん魅せられたことで、生きている内は続く永遠の地獄に思いを馳せてしまう佳作でした!