日本の小ゲッベルス達 と、ボクは本作に登場したアナウンサー達を断罪する。偉大なヤン・ウェンリー提督のように「私がきらいなのは、自分だけ安全な場所に隠れて戦争を賛美し、愛国心を強調し、他人を戦場にかりたてて後方で安楽な生活を送るような輩です。」
とまで言ってしまうと、歴史の大状況に揉まれながら必死に生きた彼等に酷だなと、ボクだって思う。フィリピンに謀略放送局を設立すべく出征する、安田顕の演ずる米良が言うように彼等の個々に守るべき者が居たのだから。だがしかし、泉下の本人達こそが、己の罪と過ちを批判的に俎上にのせ、それこそ なめろう になるくらい叩きまくり、後世の我々に…新たな戦前に生きる我々に…よくよく考えて欲しいと願っているはず。まぁ、ボクの勝手な感想ですけども♪
さて、映画について。
本作は八月に1本は欲しい重量級の戦争映画。
重厚で、抜群に面白い……と言うとアレなのですが、それでもやはりエンターテインメントとしても秀逸な傑作です。
主演の 森田剛 以下、橋本愛、高良健吾、安田顕、古舘寛治、浜田健太、渋川清彦 等々と何れ劣らぬ手練れの演者を、メインから端役まで豪華を使い倒して……なぜ、こんなに上映館が少ないの??雑魚の今年の謎暫定1位です。
森田剛、凄まじいな。
滴るほどの男の色気が、序盤からスクリーンを濡らし、強烈なオーラもあいまって誰がこの物語の主であるかと観客に思い知らせる圧倒的な存在感。時代を掴んだ者の全能感と、許されぬ過ちを自覚した者の絶望感とを、全身で示す表現力。
ヒメアノールの殺人鬼くらいしか彼の過去作を知らない雑魚ですが、なんでもっと表舞台に出てこないの?と思いつつ、ここまでの爆発力を出すためには、出る作品は精選せねば持たないかも、と思ったり。
本作の白眉は、森田演ずる和田が、雨に打たれながら独り絶叫する「壮士一たび去りて復た還らず」からの言葉の暴発。
それは雨の神宮外苑を行進する学徒兵の純真な瞳の輝きも、彼等を送り出す国民の熱狂も、己の罪業の結果であると悟った天才的な『アジテーター』の、背負いきれぬ罪と罰への恐怖と、尽きぬ後悔の叫び。
森田剛の魂を切り裂くような絶演が、ボクの胆を震え上がらせた。ここは泣くところなのかも知れないと思いながら、何かに憑かれたように物狂う森田剛が、ボクはひたすらに怖かった。
まずは必見と言える、八月に相応しいの傑作です。