地味アシスタントの切実な願望。
本作は映像作品として見応え満点の内容で、15分という短い尺の中に映画的な楽しさが沢山詰まっていました。
高級車のCM撮影が進む中、主人公である地味なアシスタントがテレビ番組に出演しているカットが挿し込まれるなどし、徐々に不穏な空気が漂っていく過程が非常に面白く、先の展開を期待させるものでした。
オチについては言及しませんが、しっかりと煽った期待感の分だけ納得できるものを用意しており、最初から最後まで観客を飽きさせない作劇ができていたと思います。
画の切り取り方もそうですし、劇伴の使い方、ストーリーのドライブのさせ方も秀逸で、この監督の長編映画が作られるならぜひ観てみたいと思わせるセンスを感じました。
地味なアシスタントの主観が反映されたカットも多く、それらが連なっていくことで見えてくる事の真相、背景に隠された願望には、観客も主人公と同調し、胸が痛むような感覚がありました。
CM撮影をしている筈なのに、明らかにカメラの方に目線を向け語りかけてくるシーンには、ぞっとさせられました。
目に見えて悪かったところもない、完成度の高い作品であったことは言うに及びません。
総じて、全編に渡る不穏な雰囲気と演出的なフックが効果的に機能した、ミニマムながらとても満足度の高い作品でした!