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殺人者のほーりーのレビュー・感想・評価

殺人者(1946年製作の映画)
4.3
【これぞフィルムノワール】

陰影を強調したシャープな映像で、官能的な悪い女が出てきて、ストーリーが二転三転して、映画好きが思わず喜びそうな演出があってと、ロバート・シオドマク監督の『殺人者』はこれぞフィルムノワールという感じの作品。

原作は文豪ヘミングウェイの短編小説。

いかにもフィルムノワールって感じがするのは然もありなん。ノンクレジットだが脚本にジョン・ヒューストンとリチャード・ブルックスが参加しているのも影響あると思う。

片田舎のガソリンスタンド店員(演:バート・ランカスター)が二人組の殺し屋に殺された。死の直前、被害者は自分の運命を悟るような発言をしていたという。

事件を調べていた保険会社の調査員(演:エドモンド・オブライエン)は、被害者の身辺を洗ううちに、かつての未解決強奪事件の手がかりを掴む、というあらすじ。

他の方も同じような感想だと思うが、工場の給与金強奪シーンでの演出が素晴らしい。

事件を報道した新聞記事を読み上げる声にあわせて、四人組の犯人が工場に侵入し、強奪して逃走するまでをワンショットで撮っていて思わず唸った。

本作はバート・ランカスターのデビュー作だが、すでにクレジットではエヴァ・ガードナーと並んでトップ扱いなのが凄い。

異例の大抜擢のランカスターだが実質はエドモンド・オブライエンが主役。ランカスターの方は冒頭を除いて回想シーンでしか登場しない。

期待はしているもののやはり新人ということを心配しての役の配置なのかもしれないが、これがデビュー作とは思えないほどバランカスターはこの時既に完成されている(若干ふてぶてしさがないくらい)。

監督のロバート・シオドマクは、ナチスドイツから逃れて亡命したお人。写真を見ると電球のような頭にメガネという博士っぽい風貌で、とても本作や『らせん階段』のようなハラハラする映画を作る人には見えない。

■映画 DATA==========================
監督:ロバート・シオドマク
脚本:アンソニー・ヴェイラー/リチャード・ブルックス/ジョン・ヒューストン
製作:マーク・ヘリンジャー
音楽:ミクロス・ローザ
撮影:ウディ・ブレデル
公開:1946年8月30日(米)/1953年4月24日(日)
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