GreenT

フロム・ダスク・ティル・ドーンのGreenTのレビュー・感想・評価

3.0
個人的には「なんじゃこりゃ〜」と思ったけど、好きな人はとことん好きなカルト映画なんだろうな〜と思いました。

私は極悪ゲッコー兄弟をジョージ・クルーニーとクエンティン・タランティーノが演じるというのに興味があったのですが、これはどーなんでしょうね?「意外とハマってる!」のか、「ミスキャスト」なのか、微妙なところだなと思いました。

オープニングでゲッコー兄弟に殺されるテキサス・レンジャーを演じるのが、あの『ツイン・ピークス』でジャン・ルノーを演じたマイケル・パークス、酒屋の店員が『ウインターズ・ボーン』、最近では『ピーナッツバター・ファルコン』に出ていたジョン・ホークスで、すっげー若くて最初ぜんっぜんわからなかった。

ゲッコー兄弟は、血も涙もないが緻密な犯罪者である兄のセス(ジョジクル)に対して、殺しや陵辱を好んでやる弟のリッチー(タランティーノ)という設定なのですが、タランティーノ、自分で脚本書いていながらリッチーを “sex offender” (性犯罪者)って設定にしたのが笑ってしまいました。

今ではすっかり有名な「タランティーノの足フェチ」もリッチーのキャラに反映されていて、サルマ・ハヤックの足の指から酒を飲みたいがためにあのシーンを書いたのか?!と思わされるシーンがありました(笑)。

ゲッコー兄弟は、メキシコ国境を超えるためにフラー一家を人質にするんですけど、お父さんがハーヴェイ・カイテル、娘がジュリエット・ルイスでこの頃のオールスター・キャストなのに、息子がアーネスト・リューという中国人の無名俳優で、養子という設定なんでしょうが、どーいう意図で中国人の養子をぶっこんで来たのかさっぱりわかりませんでした。

前半は、ゲッコー兄弟がフラー一家を人質にしてメキシコ国境を超えるまでの話なんですけど、ありがちな「フィルム・ノワール」って感じで、タランティーノの脚本でも面白くないものもあるな、って思いながら観ていました。

iMDb によると、原案を作ったロバート・カーツマンは特殊効果のテクニシャンで、1500ドルでタランティーノに脚本を依頼したそうなんですけど、1500ドルっていうのは脚本としては安いらしく、タランティーノはカーツマンに『レザボア・ドッグス』の耳を切るシーンの特殊メイクをやってくれるなら、と引き受けたんだそうです。

中盤は、無事にメキシコに逃亡したゲッコー兄弟が、逃亡者を匿ってくれる組織のコンタクトと会うため、ティティー・ツイスターというストリップ・クラブに、フラー一家を連れてやってくるんですが、このストリップ・クラブが「悪趣味!」ってかなり引きました。ヌード、ヘヴィメタ、革ジャン、バイカー、トラック運ちゃん、葉巻、マシンガン、フィストファイト、無法者・・・・

ロバート・ロドリゲス監督はタランティーノとはすごい仲が良く、世界観を共有しているようなのですが、タランティーノの映画は「女性蔑視」「暴力的」と言われているけどそうじゃない、その奥にあるものが私は好きだ!と思わせてくれるんですけど、ロドリゲス監督の世界観にはちょっと引きます。

最近、ハーヴェイ・ワインスティンの件で有名になったローズ・マッゴーワンは、ロドリゲス監督の『プラネット・テラー in グラインドハウス』でマシンガンを脚にした女性を演じた人なんですけど、この人は女性の映画の中でのイメージに嫌気がさして第一線から退いたって聞いたんですけど、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』でのサルマ・ハヤック、蛇を身体に巻きつけている踊り子の役、これも私は好きじゃありませんでした。

こういうのは男性の世界観の「悪趣味なところだな」と思いました。男性の世界観がすべて悪趣味、ということではなくて、こういう部分だけは私は好きになれないなあってことですが。

とかって思っていたら、これヴァンパイア映画なの?!

あまりに唐突な展開で意表を突かれたのですが、後半のヴァンパイアのアクションシーンは意外に面白いじゃん!って思ったら、ロバート・ロドリゲスってヴィジュアル・エフェクトでも有名な人なんですね。

フラー一家のお父さん、ハーヴェイ・カイテルが元神父さんって設定なのも、ヴァンパイア退治にはキリスト教だってわけか〜。

生き残った登場人物たちがヴァンパイアとの最後の戦いに挑む前、それぞれ武器を調達するのですが、ジュリエット・ルイスはカッコいい弓矢なのに、アーネスト・リューは水鉄砲で、「なんだよ、わざわざアジア人ぶっこんできたのに、カッコ悪い武器持たせるのかよ」とちょっと憤慨していたら、この子はヴァンパイアになってしまったお父さんを殺すときに決めゼリフはあるし、死に様もなかなかドラマチックで良かったです。考えてみれば、モーテルの部屋でギターを練習しているところも、この頃のアジア人のステレオタイプじゃないですよね。

ラスト、ヴァンパイアの巣窟だったストリップ・クラブの建物の裏側が映るのですが、実はアズテックの神殿の最上階だった!って設定で、メキシコの文化に対する複雑な愛憎が感じられました。
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