ピュンピュン丸

太平洋奇跡の作戦 キスカのピュンピュン丸のレビュー・感想・評価

太平洋奇跡の作戦 キスカ(1965年製作の映画)
4.8
お見事!!

と叫びたくなる、新年早々、胸のすくような一本だった!!

映画を愛する皆さま、明けましておめでとうございます!

敵の殲滅作戦ではなく、戦況の大勢に影響の薄いやも知れぬ〝味方の救出作戦〟という地味な展開にもかかわらず、胸のすくような素晴らしい作品でした。

自軍の階級の上下からの誹りを受けながらも、泰然自若として悠々と部下の信頼と能力を引き出し、濃霧という好妙を捉えて、与えられた任務を完遂していく。そんな、旗艦阿武隈の艦長、木村少将(三船敏郎)の姿に、理想の指揮官の姿をみます。

ただし、映画は木村少将を単に英雄視しているわけでなく、奇跡を成し遂げるに必要な色々な要素も丁寧に描き出しているところが、奥が深い。

木村をよく知る同期の上司の信頼とその配役の妙。「こういう仕事は派手な戦績がない男の方がいい」とは至言だ。かつて、戦国であれば、撤退する敗戦の殿軍(しんがり、最後尾の軍のこと)には、最も功名心の薄い、しかし優秀な武将が選ばれたものだ…。

キスカ島の司令官の、戦況と部下の心を掴んだ見事な統率ぶり。いかに木村が奮闘しようとも、受け手がそれに合わせて踊れなければ、奇跡を起こせようがない。

霧の深い、遥か海上の彼方に浮かぶ船影は、南海の孤島キスカに閉じ込められ、玉砕を命じられた兵士たちにとっては、まさに希望の光だ。そんな兵士の内面を、ウルトラマンの井出隊員とセブンの曽我隊員のコンビがコミカルに演じているところも見どころ。(^^)

加えて、緊張感ある、重厚な艦隊行動をリアルに描いて見せる、円谷英二さんの見事な特撮も見逃せないポイントでしょう。

それにしても、あらためて、日本映画界に三船敏郎さんがいてくれたことに、手を合わせて、感謝したい。
m(_ _)m