このレビューはネタバレを含みます
甲斐さやか監督が20年以上をかけ構想し書き上げた大作。
クローンを題材に命とは何かを問いかける作品。
上層階級の人間だけに与えられる「それ」の存在がリアルな設定だったし、自分が長生きしたいがために「それ」を物の様に扱う傲慢な人も描かれていて近い将来そうなるのではないかと想像を掻き立てるような演出でした。
あらすじだけを読んだときに、「それ」は本体の学習をしているとのことで完全に入れ替えをするのかと思っていたが、そうではなく病気になった部分だけを移植するということ、アルツハイマー患者の脳を移植にはまだ問題があるというところが医学にも通じていて現実味を帯びているところが怖さを掻き立てられました。
最後、新次の「それ」が生きていることから新次は死んだと見せかけて海の女と一緒に第二の人生を送っているのではないのか?(「それ」は臓器提供だけなので死んではない)とも考えました。
新次の「それ」に対する執着心だったり、「それ」が自分の代わりに生きた方が良かったという自己肯定感の低さが幼少期からの葛藤、生き辛さ、トラウマなど暗い過去に引きづり込まれる様な奇妙な一体感とともに「命とは?」を考えさせられるような映画でした。