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徒花-ADABANA-のKUBOのレビュー・感想・評価

徒花-ADABANA-(2024年製作の映画)
3.8
新しく東京国際映画祭に新設されたウィメンズ・エンパワーメント部門ノミネートの甲斐さやか監督『徒花』を鑑賞。

富裕層のみが自分への移植パーツ用のクローン”UNIT”を持てる世界。

冒頭でマイナンバーカードで国民をランク付けしているのがわかる。いや〜な世界だ。低いランクの貧困層は”UNIT”を持つことは許されない。

発展途上国では臓器移植のために子供の誘拐が絶えないなどと聞くが、それよりはクローン作ってパーツ交換って方がまだマシなのか?

もちろん「神」の領域だし、キリスト教は許さないだろうけど、やろうと思えばもう少しで出来そうなところまで来ているのが怖い。

井浦新演じる主人公シンジは、”UNIT”との手術を前にして、禁じられている自分の”UNIT”に会いたいと願い出る。

一般の移植手術でも、患者はドナーに会えないのは当たり前なのだが、”UNIT”の場合は自分のクローンだ。より「あり得ない」状況だ。

この世界では当たり前に行われていたクローンを使った移植手術だが、穏やかな思考をする自らの”UNIT”と接する連れて、シンジの心は揺れ動く。

かつて『銀河鉄道999』でも、富裕層のみが機械の身体で永遠の命を持てることを否定して、鉄郎はアンドロメダを目指したが、果たして技術的に可能になればクローンを使った永遠の命は肯定されていいのか?

リアルなSFマインドと、人間としての葛藤を描いて、たいへん好きなテーマなのだが、難点は眠くなること。映画祭で1日3本目だったからかもしれないが、あの『惑星ソラリス』に何度チャレンジしても寝てしまったように、本作でも睡魔との闘いだった。

素晴らしい作品だと思うので、ぜひ体調のよろしい時に見てください。
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