Jun潤

ぼくの家族と祖国の戦争のJun潤のレビュー・感想・評価

ぼくの家族と祖国の戦争(2023年製作の映画)
3.8
2024.09.04

予告を見て気になった作品。

1945年、ナチス・ドイツ占領下のデンマーク。
市民大学で学長を勤めるヤコブは、ドイツ軍からドイツ難民の受け入れを強要され、大学内に500人以上の難民を収容することとなる。
ヤコブの息子・セアンは腕の怪我の治療で世話になった医師をドイツ軍人に殺されたことから難民たちを受け入れられず、妻のリスは善意から飢餓状態の子供達に食糧を分けていた。
ヤコブは軍から食糧や医療の支援があるものと思っていたが、そのようなものは一切なく、難民たちによる食糧の強奪や、感染症の蔓延など、溝はますます深く複雑になっていく。
終戦間際という状況下で、“人間らしさ”が試されるー。

戦争って国対国、軍人対軍人のものだけじゃないんだと思い知らされました。
今作で描かれていたような個人同士の戦い、さらに同じ国内でも、戦争や他人に対する考え方の違いで対立することもあったんだと感じました。
実話を元にした作品で、デンマーク国内でもあまり有名ではないエピソードとのことでしたが、日本でも同じことがあったかもしれないとさえ思いますね。
もしかしたら、戦時中だけでなく、現代の、災害時やコロナ禍においても、似たような葛藤を抱えていた人もいたのかもしれません、もちろん日本も含めて。
そう思うと戦争の時代に起きた出来事というだけでなく、現代や将来においてもそれぞれが考えなければならないという普遍的なメッセージも込められていたのではないでしょうか。

作中で最初に難民に対して行動を起こしたのはリスでしたが、そんな彼女の姿があったからこそ、ヤコブがこれ以上感染症を拡大させてはならないと職業倫理に駆られる様や、セアンの子供らしく純粋で残酷な感情に任せて動く姿が強調されていたように思います。

自分が置かれている状況がどんなものなのか、相手にしている人がどの国の人でどんな事情を抱えているのかに関わらず、手を差し伸べるのか、差し伸べた人に石を投げつけるのか。
人間の性善説と性悪説のどちらを信じたいのか、自分だったらどのような行動を取るのか、あって欲しくはないけど想像を掻き立てさせる、むしろ考えなければならないと思わせてくる作品でした。
Jun潤

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