◾︎ホビット三部作第三章
【作品情報】
公開日 :2014年12月13日(日本)
作品時間 :145分
監督 :ピーター・ジャクソン
製作 :ピーター・ジャクソン、フラン・ウォルシュ、キャロリン・カニンガム
脚本 :フラン・ウォルシュ、フィリパ・ボウエン、ギレルモ・デル・トロ、ピーター・ジャクソン
原作 :J・R・R・トールキン
音楽 :ハワード・ショア
出演 :マーティン・フリーマン、リチャード・アーミティッジ、イアン・マッケラン、ベネディクト・カンバーバッチ、ルーク・エヴァンス、オーランド・ブルーム、エヴァンジェリン・リリー、クリストファー・リー、ケイト・ブランシェット、ヒューゴ・ウィーヴィング、ほか
【作品概要】
『ホビットの冒険』を原作とし、若きビルボ・バギンズと13人のドワーフが、邪竜スマウグにより滅ぼされしドワーフの王国エレボールの復興のため旅立ち、エレボールの王権の象徴たるアーケン石等を巡る争いに挑む冒険譚三部作の第三章。
当初は二部作の映画として企画されていたが、三部作となることが発表され、その三作目の内容も変更されている等の公表が中途段階にて随時なされていた。
【作品感想】
完結の第三章!……ですが、作品の上映時間の短さ(エクステンデッド・エディションではなく、通常公開版のことです。尤も、十分長い作品ではありますが)からも伺えますが、若干内容に水増し・中弛み感が否めません。
元来二部作として構成されていたものを、区切りの良いタイミングで切り分けたところ、三章部分だけちょっと薄味になってしまったという印象です。
(初鑑賞から現在まで5回しか鑑賞していないのですが、この感覚は一度も変わりません。)
そもそも、五軍の合戦におけるトーリンVSアゾグの戦いが、原作にないオリジナル要素であり、そこをうまく見せることこそが三部作の完結を担う本作に課せられた、最も重要な点であったという認識ですが、いかんせんあまり成功したとは思えません。
第一章にて、トーリンがトロルの洞窟で見つけた、ゴンドリンの上のエルフが作った名剣オルクリストを、彼が再びその手に取り戻し、もってアゾグを討つ姿は良かったです。
ですが、それ以上に良かった点は、正直特にございません。
特にクライマックスである〈五軍の合戦〉における戦闘には不満があります。
そもそも、くろがね山のダイン率いるドワーフ軍がいくら精強とはいえ、いくらなんでも多勢に無勢が過ぎます。
その上、人間側は軍団とはとても言えない難民となった一般人の集まりにすぎないため、とてもあれほど大規模なオークの軍勢と互角に戦えるとは思えません。
結局物語は戦場からアゾグとのサシの勝負へと移っていくため、その後戦場ではどうなっていたのかがわからないのも残念。絶体絶命万事休すという状況で、トーリンと仲間たちが出陣しただけで戦況をひっくり返すなんて無理ですから、首刈り戦術を選んだトーリンは正しいと思いますが……。
少なくとも、アゾグが指揮官として前線にいない状況を、もう少し緩和して、前線での決戦としてえがいてくれれば、これほど物足りなさを覚えることはなかったでしょう。
正直なところ、中つ国第三期の壮大な物語というマクロ視点では、ホビットの物語では未完の空気が漂うのは当然ではあります。
それ故に、本三部作は『ロード・オブ・ザ・リング』三部作への序章・プリクエル的立ち位置(本作の終わり方がまさにその典型)として見た方が楽しめるものではあるのです。
それでは初心者さんに不親切?という気もしますが、「調べりゃ大抵のことはわかる時代、それぐらい自分で補って、ある程度忖度すりゃいいんだよ!」という本音もありますので、初めてトールキンの世界に触れるという方のことは、この際脇においておきましょう。
何はさておき、ニュージーランドの大自然を活かした圧倒的ビジュアルで、再び私達を中つ国の世界へといざなってくれたピーター・ジャクソン監督及び関係者に感謝を。
中つ国を巡る壮大な物語、ぜひご堪能ください。