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永遠のモータウンのkaomatsuのレビュー・感想・評価

永遠のモータウン(2002年製作の映画)
4.5
例えばメンフィスのスタックス・レコードならば、ブッカー・T&ザ・MG'sという専属バンドがいて、オーティス・レディングヤウィルソン・ピケットをはじめ名だたるビッグ・アーティストたちの数々の歴史的録音を残しただけでなく、彼ら自身も「グリーン・オニオン」などの大ヒットを飛ばしているので、知名度は比較的高い。しかし、デトロイトを拠点とするモータウンの場合、テンプテーションズやフォー・トップス、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズらのバックで演奏していた専属バックバンドについては、あまり知られていない。本作は、モータウンを代表する華麗なるアーティストたちの黄金期を縁の下で支えた専属バンド、ファンク・ブラザーズにスポットを当てた、珠玉のドキュメンタリー映画だ。

本作の見どころは、1971年にモータウンからリリースされたマーヴィン・ゲイの歴史的名作「ホワッツ・ゴーイン・オン」で初めてその名をクレジットされるまで、まったくの無名の存在だったファンク・ブラザーズの隠れた栄光の軌跡を、メンバーたちの雑談を交えながらも克明に捉えている点。当然、スティービー・ワンダーやダイアナ・ロスなどのビッグネームは出てこない。そして、多くの関係者の証言と交互して、モータウンを愛するアーティストたちが、現在のファンク・ブラザーズの演奏をバックに往年のヒット曲を披露するのも、もう一つの見どころ。中でもチャカ・カーンが歌う「ホワッツ・ゴーイン・オン」は最高にクール。ああ、これぞマーヴィン・ゲイのあのアルバムと同じバックメンバー(厳密にはメンバーが多少交代しているので異なる)の演奏なんだ…と感激。そして、ベン・ハーパーによる「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベッグ」は、不意に始まるミディアム・テンポの8ビートに乗って、強拍(スネア・ドラムの入る2拍と4拍)に合わせてギターのカッティングとタンバリンを重ねて強調する、ファンク・ブラザーズならではのグルーヴに思わず「これぞモータウン・サウンド!」と一人叫んでしまった。その他、元JB'sでPファンクのブーツィー・コリンズが、珍しくもトレードマークの星型ベースを持たずに、「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」と「クール・ジャーク」を歌う姿を観て、ファンク・ブラザーズによるモータウン・サウンドは、鬼才ブーツィーをも虜にしているんだなぁ、とつくづく思った。

映画と同じくらい、いや、おそらくそれ以上に音楽が好きな私には、各楽器別のフェイバリット・ミュージシャンというのがいる。特にポピュラー音楽においては、ドラムと共にベースの役割というのがとても重要だと思っていて、マイ・フェイバリット・ベーシストとなると、日本では、迷うことなくダントツで細野晴臣さん。海外では、ずっとポール・マッカートニーだと思っていたのだが、ロックンローラーにしてポピュラー史上最高のヒットメーカー、そして大スターであるポールは多才過ぎて、もっと職人気質のベーシストがいい。そう考えたとき、自分にとって最高の海外ベーシストとなるのが、このファンク・ブラザーズのジェームズ・ジェマーソンなのだ。ダイアナ・ロスの「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」や、ジャクソン5の「帰ってほしいの」の、緩めの16ビートをシンコペーションを多用して、実にカラフルなフレーズで彩るジェマーソンの心地よいベースラインは、モータウン・サウンドの要であり、ポピュラー・ソウルにおける一つの究極的なサウンド・アプローチの完成形として、永遠に私の心を揺さぶり続けるのだ。