CHEBUNBUN

彼のイメージのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

彼のイメージ(2024年製作の映画)
2.5
【それは誰のイメージだい?】
第37回東京国際映画祭コンペティション作品を観た。

本作はコルシカ民族解放戦線を追う女性ジャーナリストの思わぬ死をトリガーに恋人目線から彼女の活動を追う内容である。

実は『スウェーデン・テレビ放送に見るイスラエル・パレスチナ 1958-1989』『シビル・ウォー』と共鳴するものがあり、退屈な作品でありながら興味深い要素を持っている。

前者を重ねると「メディアはどう事象を語ったか?」に力点を置いている。主人公はスペクタクル的な画により表層的な語りとなってしまい陳腐な自己が形成されることを回避しようと葛藤しながら取材、編集、レビューの工程をこなす。写真の背景に特化した作りとなっているのだ。

そこで『シビル・ウォー』が対岸の映画として光る。『シビル・ウォー』は戦場カメラマンに必要な意図的に思考停止させる瞬間を捉えるため、スペクタクル全振りな作品となっている。一方、こちらではコルシカ民族解放戦線の過激で凄惨な殺戮の事実があるにもかかわらず、その凄惨さはスペクタクルとして映画に取り込まないよう抑えている。カフェで銃殺され、血溜まりができている場所を撮影する場面ではロングショットで彼女を収め、カメラを向けることにより死角付近にいる死体の存在に気づかされるものとなっている。

しかしながら、タイトルが『彼のイメージ』となっているものの、目線が散漫となっており、「これは誰目線の話なのか?」と疑問になる場面が多発していて、丁寧なようで随分と雑な映画に感じた。
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