ライナー•ヴェルナー•ファスビンダーが29歳で監督、脚本、主演した傑作。
『ペトラ•フォン•カントの苦い涙』『13回の新月のある年に』の2作品が好みと言えずで、その後は敬遠しつつあったけど、これで帳消しできるくらい苦手意識を払拭しました。
実は本人が出て来た途端、生理的に受け付け難い感じがしたのだけど、観終わる頃には愛着が湧いてしまった感じ。素朴で粗野で愛に貪欲で向こう見ずな男に成りきっていた。
ファスビンダーがゲイを直接的に描いた最初の映画であり、ボカシは入らずにフリ◯ンだらけ。
難解さはなく非常にシンプルに展開する物語。ジャケ写にある通り、主人公FOXが『奪われて、奪われる。』話。貧乏人が富裕層に搾取されるお話。
学もなく金もなく品もなく、見世物小屋で働いているゲイのFOX=フランツ(監督本人)は、小屋の経営者で恋人のクラウスが目の前で逮捕されて失業する。その後に盗んだ10マルクでロトに当たり50万マルクの大金を手にする。ブルジョワが集う同性愛者コミュニティに参加し、工場経営者の御曹司オイゲンと知り合い夢中になる。身も心も金も尽くしまくるフランツだが、オイゲンは初めからフランツの大金目当てでしかなかった...
色彩演出が美しい。ブルジョワの趣味嗜好がいやらしく見えて行くのも滑稽。内容はシリアスで辛いラストが待っていたが、資本主義社会への露骨な警告をメッセージにしていて、辛辣そのものを貫く展開にファスビンダーのブレない意思を感じ惹き込まれた。
出演者はファスビンダーの取り巻き軍団のような常連たちだが、その中に撮影時には愛人だった2人が含まれている。
モロッコ旅でのゲイ役でエル•ヘディ•ベン•サレムと花屋役アルミン•マイヤー。
そして、撮影時には離婚していたが過去に2年間結婚していた7歳上の元妻イングリット•カーフェンが歌手役で出演し歌っている。
公私混同なのか?仲間がバイセクシャルのファスビンダーを公認で応援しているからか?生命共同体のよう(笑)
そのお陰で今、私達は画面で確認し楽しませてもらえています。
ファスビンダーの世界をもっと知りたい欲求が深まりました。